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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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風馬の決意-2

「私、嫌だよっ!転校何てっ、引っ越し何て!」
「若葉……。」

私はその日の昨日、心から叫ぶように自分の気持ちを吐き出した。その時思い浮かぶのは愛おしい彼の顔。

「私…、約束したの、彼と。高校卒業して安定した生活と収入を得れたその時、彼が風馬君が、私を迎えに行くって…。」
「………。」
「確かにお母さんの気持ちも良く分かるよ、今のままじゃ安定した生活を得れる保証もない、青果店の事も店を営んでいく事、私を育てる事、全てほとんど一からやってきて本当に慣れない事だかけ!ただ頑張る、それもがむしゃらに…そんな精神論だけでこれらをこなせるほど現実は甘くない。」

私だって、娘として母の事を見て来たつもりだ…、一度は家事も育児も追っかけて行った夢も挫折して私と父を置いて家を出て行って、それから数年の歳月が経ち、この街へやってきて実の父親でもあるお爺ちゃんといがみ合った事もあった、それでも父に詫びる想い自分自身を変える重い、そして娘の私の為に本当に慣れない色んな事をその身一つでやり遂げてきた。

「そんな折、その男性と出会い、お母さんの身の上話を聞いて、どうにかしてあげようと今回の話が出たんだもんね?」

確かにその人の家に嫁げばもう慣れない青果店の経営もしなくて済む、もう女手一つで私を育てるでなく血は繋がってはいないものの新しい父親が出来て、正直私たち親子にとって良いことが多すぎる、収入面でも生活面でも…。

私だってお母さんには幸せで居て欲しい、最初は私とお父さんを置いて出て行った事を許せないしあんな人、母親でも何でもないって…そう思ってたけれど。

彼女が来て、お爺ちゃんに疎ましく思われても、慣れない店の運営に苦労しながらも私には辛そうな顔一つ見せず、戻ってくるんじゃなかった、経営なんて出来る訳がない…と愚痴や弱音も一切吐かずにやり遂げる母を心から尊敬している。

だから、この要求には是が非でも受け入れ、心から喜んでついていかなくてはいけない…けれども…。

「彼と、風馬君と離れたくないのね…。」
「お母さん…。」

ようやく重い口を開いた母。

「分かってる、貴女がどれだけ彼の事を愛しているのかも、そして私がいかに残酷な事を言っているのかも…。」

やはり血の繋がった親子、…と言った所か。

「だったらぁ…。」
「けどね若葉、このままじゃダメなのよ、お母さんもそしてアンタも。」
「っ!」
「あんたはこのままずっと転校しない、この街からも離れない、で私の手伝いをしながら卒業した後就職活動してく、それで風馬君がいつか迎えに来る。…確かに筋は通ってる、けどそれは貴方達の理想でしょ?悪いけどね現実はそんなに甘くないから、自分でもそう言ったよね?」
「それは…。」
「まずこのままで良い…訳ないから、何度も言うようにこの店は赤字で今にも潰れそうなの!アンタに余計な心配かけたくないから今まで黙ってたけど…。正直いつ店を畳んでもおかしくない訳!時代が時代だし、やっぱり古い青果店じゃーどうにも最新のスーパーに客足を持ってかれちゃうし、そうでなくても私のような素人が経営をして更に業績は悪化!だから彼がアンタを迎えに来るのを待ってる間に店は潰れる、そうなりゃ私は無職仕事探せば良いとかそんな簡単な話じゃない!ゆえに食べていけなくなる!…だけど仙台に実家を持つ彼と結婚すれば安定した生活が手に入る、そうでしょ?」
「……。」
「…それと風馬君の事だってそう!確かにあの子は良く出来た子よ、だけど世の中に絶対はない!そんな簡単にバイトしました大学で絵の勉強しました、そこからデザイナー企業に就きました、それでアパート借りて二人で暮らします…正直分かってないわよ、アンタたちは!」
「それは…。」
「……少し言い過ぎたわ。けど!よく考えてね将来の事。」

自分の意見が通らないのが気に入らないのか、若者が現実も知らないで軽口言うのに腹が立ったのか知らないが、急に滝のように強気な口調で説明に入った母。

「…まっ最終的に決めるのは若葉だから…、今の話を聞いて一緒に仙台に行くも良し、それでも愛おしい彼を信じて待つも良し。ただその時彼を待つ家はもうないから、非情だし薄情かもしれないけど、友達の家に居候するなりするしかないわ、お金の事だって勿論援助はするわ、足りないなら電話寄越して、どうにかして工面してあげるから…。」

そう捨て台詞を残し、複雑な面持ちで私に背を向け、部屋へと去って行った。

「お母さん…。」



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