誓いのペンダント-3
「何でもないさ」
「嘘。お兄ちゃん、何かあったの? 私に出来ることなら・・・」
「何でもないと、言ってるだろう!」
思ったより、大きな声が出た。道行く人が、驚いた目でこちらを見る。
「すまない・・・とにかく、何でもないんだ」
「絶対、おかしいよ・・・」
「それから、唯。俺にあまり馴れ馴れしくするな。俺達は友達じゃない。兄妹なんだ」
「なに、それ・・・絶対、絶対におかしいよ! 今まで、ずっと仲良くやってきたじゃない!!」
「うるさい! うざったいんだよ、そういうの!」
「そんな・・・」
唯が走り出した。泣いていたかもしれない。
言って、後悔した。しかし、これでいいのだとも思う。これが、唯の為なのだ。
浩之はそのまま学校に行った。開始十分前、教室にはすでに多くの学生が来ている。
「おす。浩之」
「おはようさん」
席に着くと後ろから声がかかる。いちおう、友達だった。
「唯ちゃんは、元気ですかな?」
「ああ、お前に心配されたくないと言ってたぞ」
「そんなぁ、ひどいじゃないですか、お兄さん」
浩之はあいまいに笑った。
「そうだ、浩之」
「何だ?」
「ちょっと、聞いたんだけどな」
そいつが、身を乗り出してきた。
「白木って知ってるか?」
「ああ」
白木明。某有名女優の息子。かなりの美形で、金持ち。女関係の噂が絶えない男だった。
「そいつが、唯ちゃんを狙ってるっていうんだよ」
「白木が・・・唯を・・・」
ありえる話だった。唯はこの学校でも屈指の美人として知られている。性格だって優しく、アイドル的な存在だった。
「それ、本当の話なのか?」
唯が白木など相手にするはずがない。そう思っても、やはり心配になる。白木については、黒い噂も多い。危ない奴らとつるんでたり、薬をやってるという噂。自分をふった女を輪姦したという話まである。
「さあな。とにかく気をつけてくれよ。唯ちゃんは僕らのアイドルなんだから。唯ちゃんは、ずっと乙女でいなければならないんだよ」
浩之はそんな話など耳に入ってなかった。
唯はただの妹だ。そう思っても、動揺している自分がいる。この妙な感覚に、浩之は戸惑った