誓いのペンダント-27
今日も雨が振り止まない。昨日ほとんど眠れなかったせいか、今日の授業は爆睡だった。今日は、唯は学校に行っていない。家で休んでいるはずだ。唯がもし薬物を使用していたら、禁断症状が出るはずだ。それがどれくらいになるかはわからないが、あまりにひどい場合は病院につれていかなければならない。今は義母が付いているはずなので、あまり心配はしていなかった。
学校が終わると、すぐに家に帰った。
「ただいまー」
「あっ、浩くん。ちょうど良かった!」
帰ってくるなり義母が飛び込んできた。尋常でない様子だ。嫌な予感がした。
「どうしたんです?」
「唯が、唯がいなくなったのよ!」
それを聞いて、浩之は舌打ちをした。やはり病院に連れていくべきだった。昨日の状態からして、唯に幻覚症状が出ているのはわかっていたのだ。面倒なことにしたくないという気持ちで、家で療養させていたのがいけなかった。
「どうしよう。ちょっと、買い物に行って、帰って来たら・・・」
「落ち着いてください。いつごろなんです? 唯がいなくなったのは」
「今さっきよ・・・あんまり時間はたっていないと思う・・・」
「携帯は?」
「置いていってるの。あの子・・・」
嫌な予感が止まらない。妄想で狂った唯が何をしでかすか、浩之には想像もつかなかった。
「ああ・・・私がいけなかったの。ちゃんと病院に連れていけば・・・素人にどうにか出来るものじゃなかったのに・・・」
「それは俺も同じです。とにかく、俺は唯を探してきます。義母さんはここで待っていてください。唯が帰ってくるかもしれませんから」
「わかったわ・・・でも、もし、見つからなかったら・・・」
「その時は、警察に連絡するしかありません」
「警察・・・」
「義母さん。それは仕方がありません。何かあるよりはましです」
本当は今すぐにでも警察に行くべきだ、と思った。結果的に唯は罪に問われるかもしれないが、どんな理由があるにしろ、唯は薬物に手を出したのだ。その責任はとらなければならない。それに、白木に無理矢理飲まされたのなら、罪にはならないかもしれない。
「そうね・・・仕方ないわね」
それでも、それは最後の手段にしたかった。唯は被害者なのだ。そういう思いがある。それに、もう一つ。唯は浩之自身が助け出したかった。自分自身のケジメのために。
「じゃあ、俺は唯を探してきます」
義母が頷く。
手遅れになるかもしれない。そう思った。きけんな賭けになる。それでも、負けるわけにはいかない。
浩之は歯をくいしばった。