しんぷるらいふ-2
「あたし幽霊なのに」
「あ、俺そんなちっさいことには気にしないから」
「小さいかな〜」
「小さい小さい。俺も幽霊だから」
一瞬の沈黙のあとチカは恐る恐る彼の顔を見た。
「まぁ嘘だけど」
ユースケが意地悪そうに笑う。
チカは無言でユースケを叩いた。
今日は金曜日。次の日仕事が休みだとユースケは言った。だからチカは安心してユースケといれた。
ユースケは彼女もいないらしい。いつからいないのかチカは聞いたが、困ったように笑うだけなのでこれ以上追求しないようにした。
「どこか行きたいところある?」
「特にない。あたしの家にだけは帰りたくない」
「家出少女か」
少し変な子を拾ってしまったなと彼は思った。仕事の疲れもあって自分の家に彼はだんだん帰りたくなってきた。
「おろしてくれていいんだよ。」
チカがぽつりと言う。
「あたし、幽霊なんだから同情する必要ないよ。ユースケもう疲れたでしょ?うちに帰ろう」
ユースケはチカを見た。
「助けてって言ってるようにしか聞こえないんだけど」
ユースケは笑った。
チカも泣きそうな顔で笑った。
二人はユースケのアパートについた。ユースケはチカと寝る気は無い。
だけど、ほうってはおけなかった。
ユースケが風呂からあがるとチカはユースケのベッドで寝ていた。
ユースケはチカの寝顔を見ながら頬をつつく。やわらかい感触に彼女が幽霊ではないことを確信する。
「あ」
チカの目が開いた。
「ごめん、起こした?」
ユースケは静かな声で言う。
「ううん」
二人で目を合わせて笑った。