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夏が来る。

夏は暑い。

肌は汗でベタついて、とても不快になる。

だから時々夕立が来たとき、俺は傘をささない。

周りにいる奴らと、降りしきる雨のなかで体を動かす。

いつもは冷たい雨も、なんだかやけに温くて、それがさらに俺たちの気をたかぶらせた。

普段なら、こんなことは絶対にしない。

こんなことをするのは夏が来るから。




夏は暑い。

あまりの暑さに一人涼しい部屋で過ごしたくなる。

だけど、気の合う奴らに誘われたら暑さなんか気にせずに遊ぶ。

一人でいたいのに、本心は拒んでいる。

なんで暑くても遊ぶのか。

それは夏が来るから。



まだガキの頃、山に沈んでいく夕日を見た。

いつも見る日とは違う、怖くなるほどの鮮やかな橙色。

それを見て泣きながら家に帰ったのを覚えてる。

誰かにいてほしくて、だけどそういう時に限って誰もいない。

窓から夕日が差し込む。まるで俺を捕まえるかのように。




突如、家の電話が鳴る。日に当たらぬように慎重に移動しながら受話器をとった。


友達からだった。


一緒に遊ぼうと言ってきた。俺はすぐに返事を返し、受話器を置いた。




もう日差しは気にならなかった。

外に出て、山の方を向くと、まだ日は半分ほどを山から出していた。

さっきまでは恐怖の的だった夕日も、今はまるで一緒に遊ぶ友達のように思えた。




今は、もう夕日を見ても気にならない。

窓を開けて空を見る。
暗闇にわずかに日が混じった紫の空。


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