黒澤 ミカ-7
男子バスケの試合はハーフタイムに入った。
女子バスケの方も片付けは済んだが、今日はそのまま観戦。
問題のユウキは…一人、外のグラウンドにある水道に向かって行ったようだ。
体育館の側にある部活棟にも水道はあるが、少し離れた場所に向かった。
チームメイトも今はそっとしておこうと思ったのか誰もついていかない。
私だけがユウキを追いかけていた。
「大丈夫?ユウキくん」
「…!せ、センパイ…!」
ユウキは水道の水でひたすら後頭部を冷やしていた。
どうやらこの試合展開で責任を感じてるようで顔が真っ青…と思いきや突然顔が真っ赤になった。
元々表情豊かだけども今日は一段と表情の動きが凄い。
「…大丈夫?」
「だだだ、大丈夫でひゅっ!?」
…全然大丈夫そうに見えない。
なんだかパニックみたいな状態になってるし、私が来た事がそんなに驚く事だろうか。
もしかしたら体調面でも調子悪いのかな?
風邪をひいて熱があるとか。
「ほら、ユウキくん落ち着いて。ちょっとおでこ借りるよ」
漫画みたいにおでこ合わせ…なんて事はしないけども右手でユウキのおでこを。左手で自分のおでこを触って熱比べする。
アバウトすぎてアテにならないだろうけども、ユウキはそんなあからさまな熱は出ていないようだった。
「は、離れ、てくだしゃぃ…」
「…照れてるの?可愛いね」
パニックは落ち着いたが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
あーもぅ…ユウキは本当に可愛いなぁ。
どっかの猿も可愛い一面があったりして面白かったけど、ユウキとは比べ物にならない。
ただ…何だかもじもじとしてない?
「…あら」
「ごごご、ごめんなさい!ごめんなさい!違うんですコレは!」
ユウキの股間がズボンの上からでも分かるくらいに盛り上がっていた。
女の子に触られるだけで勃つなんてピュアにも程がある…なんてワケないよね。
「もしかして…知ってるの?」
「…ごめんなさい。一昨日、黒澤センパイが兄の部屋で知らないセンパイとシてるのを見てから何も集中できなくて」
「兄…?って…あー、高原」
一昨日、新堂とヤったのがクラスメイトと高原の家。
そして目の前にいるのも…高原 ユウキ。
兄弟、だったのか。
全然似てないし気がつかなかったけども同じ名字だし分かっても良かったのに。
「失望、したでしょ。ごめんね」
「………」
チームメイトから見てもユウキは恋愛感情はともかく、私になつくだけの好意を抱いてくれていた。
そんな相手が馬鹿みたいにヤりあってたら失望して試合とかに集中できなくなるのも仕方ない。
そんなエロ女に触られて大きくしちゃう辺り男の子だなと思うけども、そんな事を言ってられる状況じゃない。
ユウキは…あんなにもバスケが好きだったのに私のせいでバスケに集中できなくなるなんて申し訳ない。
「あの人は…センパイの彼氏ですよね?今日も応援しに来てたし」
「えっと…もっと失望されるかもしれないけど正直に言うね。アイツやユウキくんのお兄さんの高原は彼氏彼女とかじゃなくてクラス単位でのただのヤり友というか…」
いっそ失望させまくって私を嫌いになればユウキはバスケに集中できるようになるかもしれない。
そう思って素直に全部話してしまった。
あはは…こうなると変な笑いが込み上げてくるね。
気が楽になったような、その一方で凄く胸が苦しいような。
コレは…今後私の方が調子悪くなりそうだな。
結構本気で、ユウキの事が好きだったみたい。
本人の前では我慢するつもりだけど今にも涙が溢れそうだ。
こんな自業自得…これ以上、ユウキに迷惑をかけたくないから意地でも我慢してみせるけど。