蓮と巴と黒崎-5
私の気持ちとは裏腹に眩しすぎるくらいの晴天に恵まれたデート?日。
「お待たせー、待ったー?♪」
「んもぅーおせぇーよ❤」
周りは皆イチャイチャカップルばかりだ。まるで私とそして彼を痛みつけるように。
結局来てしまった。自分でもなぜなのかよく分からない、でも!彼が電話越しに言った言葉が未だ頭から離れずにいて。
…一体これで何が変わると言うのだろうか、きっと私にはううんきっと彼にだって分からない筈だ。
このデートのようでデートでない、この日で…。一体……。
「お待たせー!」
「っ!!」
彼が来た、いつもとなんら変わりもなく。
「……。」
「………。」
案の定訪れる重たい空気。
お互い約束の時間より早く来てしまった、誘ってきた彼より私の方がもっと早く来て。これで分かる、私たちがどれだけ思い詰めていたのかを。
「……。」
見慣れた顔な筈なのにどうしてこんなにそわそわするのか。
「中、入ろうか?」
どうにか言葉を発した彼、私は先ほどからほとんど無言だ。
巨大水槽に優雅に泳ぐ魚たち。そういえばずっと前ここで変な冗談を言わされてたっけ。
それで心なしかお魚さんたちが妙にびびっていたような。あの時は確か若葉とあたるも居たような。
「あ、小魚沢山♪」
蓮に言った訳じゃない。ただの独り言だ、この気まずい空気を少しでもよくしようと、妙な悪あがき…的な。
「……。」
それからも色々回るけれど結局お互いに何か話す事もなく、水族館を出て、人気のない川へと向かい。
ゆっくりゆっくりと流れる川、遠くから耳にする人の声。
本当に静かな空間が私と彼を包み込む。
「……。」
「………。」
それでも尚、無言を続ける彼と私。
すると。
「ごめん…。」
「っ!!」
ぽつりと物申し。
「わ、私こそ!」
「いや悪いのは僕だ!僕があの時ちゃんと。」
「蓮……。」
これじゃーあの留守番メッセージの時と同じだ。
「違うよ、何言ってるの!だからと言って浮気して、あの時まだ正式に別れてもいないっていうのに。」
「でも元はと言えば僕が…。」
「……。」
「巴。」
「?」
「僕とやり直そう。」
「っ!!」
衝撃的な一言。でも、……ずっと欲しいと思ってた一言だった。
「今度は大丈夫、今度こそ君の話をちゃんと聞く、君を受け止めるから。」
「蓮…。」
「口だけじゃない、僕なりに考えたから。」
何のこっちゃ…、でも一つだけ分かる事がある。
彼は改心してくれた、そしてもう一度私何かとやり直そうと言ってくれた。
「っ!!」
そういい終えるといきなり私を力強く抱き締めてきた。
「れ……ん。」
「今度こそ、…今度こそ、放さない…絶対だ!」
「……。」
あれ。
何だろう。
涙が……止まらない。
「うっうう、蓮…蓮!」
今まで我慢していた物が涙をなって全て吐き出されたような、そんな感じだ。
そして私を放し、そして今度はケータイをポッケから取り出し、おもむろに指を動かしだして。
「何、してるの?」
「何って掛けるんだよ、彼に。」
え、彼って、まさか。
以前別荘に行った時に今後三人で仲良くしようと蓮に渡した隼人のケータイ番号のメモ。
「ちょっ!待ってよ!何だってこんな時に彼と。」
「こんな時だからだよ。」
「え……。」
「決着を、つけるんだ。」
「……。」
そうね、そうだよね。