車内学習 〜近所のユミカちゃん-1
自宅前の駐車場でクルマを洗っていると、近所に住むユミカちゃんが犬のしっぽのように激しく手を振りながら駆けて来た。
「ねえ、女の子のオチンチンて、どこにあるの?」
「え…」
いきなりそう尋ねられ、返答に困った。
今年の春、小5になったばかりの彼女は、時々今みたいな難しい質問を投げてくる。
「そうだなあ、男の子と同じあたりだよ。」
そんな時はなるべく誤魔化さないで本当の事を言うようにしている。
「ユミカにもあるの?」
「あるよ。」
「どこ?」
じゃあ、パンツを脱いで見せてごらん、教えてあげるから、なんて事は言わない。そこは大人としてわきまえているし、ご近所とトラブルになっても困るから、慎重に応対する。
「そのうち生えてくるよ。」
「ええーっ!生えるの?男の子みたいに?」
「いや、そこまで大きくはならないかな。」
「じゃ、どのくらいの大きさになるの?」
性的な興奮の度合いによっても違ってくるけど、という前置きはもちろん付けない。
「ユミカちゃんの学校には、背の高い子も低い子もいるよね?」
「うん、いる。」
「それと同じでね、みんな大きさも形も違うんだよ。」
「顔が違うみたいに?」
鋭い。この子の理解力、洞察力には時々舌を巻かされる。
「そうだよ。よく分かったね。」
「へへ。」
彼女は屈託無い笑顔を広げた。まるで花が咲いたようだ。
「いつごろ生えてくるのかなあ。」
そういえばいつなんだろう。正確には生えるというより成長するわけだから、それと分かる状態まで成長するのがいつ頃なのか、という話なんだけど。
ユミカちゃんは、膝丈の赤いプリーツスカートの股のあたりを見下ろしている。
足が疲れてきたので脚立の一段目に腰掛け、なんとなく同じ所に視線をやった。
「何?」
不意に顔を上げたユミカちゃんと目が合った。
「え?あ、いやいや…早く生えるといいね。」
「うん!」
彼女は少し足を開き、お辞儀するぐらいに大きく上半身を傾けて自分のそのあたりを覗き込んだ。
目の前にユミカちゃんのセミロングの髪が垂れ下がっていている。美少女ヒロインをプリントしただけのシンプルなTシャツがたわみ、胸元の素肌がかなり奥まで見えている。ブラはしていない。
微かに膨らみ始めたそこはまだ固そうで、その先端にはほんのりピンクがかったちっちゃな突起が付いている。
「ねえ、」
「なな、何?」
ユミカちゃんは顔を上げずに訊いてきた。胸を見ていたことには気付かれずに済んだだろう。
「芽ぐらい出てないのかな。」
「芽?」
「草花が生えるときって、最初に芽が出るでしょ?」
「う、うん、そうだね。」
その部分の事を肉の芽とか蕾とか言うことがある。大人のそれを思い出し、ちょっと動揺した。
「見てみようかなー。」
ユミカちゃんはスカートを捲り上げ始めた。大人のオンナの様にムッチリと熟してはいない素朴な太腿が剥き出しになっていく。慌ててユミカちゃんを止めた。
「だ、だめだよ、こんなところで。誰かに見られたらどうするの?」
「え?見られちゃいけないものなの?」
「うーん、二つの意味で見られちゃいけないと思うよ。」
なるべく冷静に答えた。
「例えばね、男の子がオチンチンを丸出しにして歩いてたらどう思う?」
「えー?」
彼女はちょっと恥じらったような顔をして視線を逸らした。
「ヘンだよー、そんなの。」
「だろ?女の子もむやみに見せちゃダメだよ。」
「あー、うん。なんとなく分かる。」
「それからね、人に見られちゃいけない所を自分で見ているのを誰かに見られたら?」
「恥ずかしい…かな。」
「ね?そういうわけだから、今ここで見るのはやめようよ。」
「うん!分かった。」
素直な子でよかった。路上で股間を丸出しにさせているのを近所の人に見られたら…通報確定だ。
スカートの裾を下したユミカちゃんが、ニッコリ微笑んだ。
それから、少しはにかむ様に俯きながら尋ねてきた。
「…ねえ、男の子は自分のを見たりしないの?」
またまた答えにくい事を。でも、正直に答えてあげることにした。
「見るよ。」
「どうして見るの?」
「う…さあ、どうしてだろうねえ。」
「ふうん。見てどうするの?」
「どう、って…」
トイレ以外でわざわざそこを見るタイミングといえばアレする時しかないけれど。それはさすがに言えない…
「触ったりするの?」
ユミカちゃんはわずかに頬を染めながら、興味深々の目で訊いてくる。
「さ、触るよ。」
「どうして?」
そう言いながら、彼女は太腿をモジモジさせ始めた。まだ小学五年生になったばかりだけど、既にオンナの気配が現れ始めているようだ。このまま話し続けていると、ちょっとアブナイ感じになるかもしれない。
「ね、オシッコ我慢してない?」
ハッと顔を上げ、太腿の動きを止めたユミカちゃんが答えた。
「…うん、少し。」
「帰る?我慢は体に悪いよ?」
彼女は唇を巻き込む様に噛んで黙っている。
「道、分かるよね?」
分かるに決まっている。彼女の家とは数十メートルしか離れていない。ご両親とは天気の話ぐらいはする間柄だ。