ジュディー-7
「此処はそんなに高い店なのか?」
「何が?」
「だから1皿に2〜3切れしか乗って来ないとか」
「2〜3切れってことは無いけど似たようなもんよ」
「そうか。高い上に量が少ないのか」
「少ない、少ない」
「おや、別に少なく無いじゃないか。これは普通だよ」
「そう? さあ食べよう」
「うん。それで2軒目の店で何かセクシーな服を探してるんだけど、そういうのを扱っている店は知らないかと聞いて教えて貰って来たんだ」
「へえー。何処にある店?」
「六本木だから赤坂からは近い。ジュディーがテレビ出演している間に見て来るよ。どうせそういう店は深夜までやってると思うから」
「そうね。ちょっとウェイターを呼んで」
「何?」
「だから追加注文」
「何?」
「注文の追加」
「聞こえたけど、僕は1皿しか食べて無いんだよ」
「遠慮しないで食べなさい」
「別に遠慮してんじゃない。もうお腹いっぱいなんだよ」
「駄目ねえ。そんなんで私の相手が務まると思ってんの? 童貞だって私は容赦しないんだから」
「何? それはどういう意味?」
「相手が童貞でも遠慮したり手控えたりはしないっていう意味」
「何を遠慮して何を手控えるの?」
「後で教えて上げる。チンポ磨いて、じゃ無かった、チンポ擦って待ってなさい」
「あのさ、僕はマネージャーは新米なんだから脅かすなよ。本気にしちゃうじゃないか」
「喜んだ?」
「喜びゃしないよ。僕は白人より黒人の方が好みなんだ」
「あらあ、言ってくれるじゃない。黒人の何処がいいの? 黒人は臭いわよ、体臭が」
「それがいいんだ。鼻が曲がる程臭いのが」
「言うわねえ。黒人とやったことあんの?」
「それは原子力潜水艦です」
「何それ?」
「だからノーコメント。やったともやらないとも言いません。それが我が国の基本原則なのである」
「何が基本原則よ。黒人の写真見たことあんの?」
「それは写真くらい見たことあるさ」
「プッシーの写真よ」
「さあ、プッシーと言えるかどうか、毛の生えてる所が写っている写真なら見たことがある」
「そんなの駄目よ。黒人のプッシー見てごらん。真っ黒で中をめくると赤いのよ。気持ち悪くて腰抜かすわよ」
「ああ、それがいいんだ。そのアンバランスと言うか、暗黒世界の向こうに輝いてる燭光と言うか、実に暗示的な光景だね」
「本当に見たことあんのかな? ま、いいや。どうせ今に分かる」
「しかし驚いたな。ジュディーは軽く4人前は食べるね。僕を基準にすれば10人前くらいは食べてる計算だな」
「何言ってるの。私はライスを食べて無いからよ」
「それでも肉だけで10皿食べた。僕はライスを食べたけど肉はカルビ1皿分だよ」
「厭らしい。数えてるの?」
「数えなくてもそれくらい分かるさ。計算は僕の得意の分野だし」
「それじゃもっと注文しようかな」
「もうやめとけよ。食べたければいいけども無理するとお腹が出て来るんじゃないのか。どうせテレビだって裸になるんだろ?」
「勿論」
「お腹が出てたらみっともないじゃないか」
「それじゃやめとこう」
食事を終えるとテレビの出演にはまだだいぶ間があった。少し早いけど早い分にはいいからテレビ局に行こうと言う清を押し切ってジュディーは清が聞いてきたというアダルト・ショップに行った。そこは皮とラテックス製の衣装専門店でアダルトショップで調べた清のリストには入っていなかった。職業別の電話帳で調べたけれども載っていなかったと言うと電話帳なんか見て来る人はいないので載せてませんという返事だった。店内は皮特有の匂いが立ちこめて眩暈がしそうだった。ジュディーは皮の服が好きだと言い、夢中になって見ていたが、清はマネージャーだからスケジュールに穴を開けてしまうのが1番怖いことで、時間が気になってゆっくり見ている気にはなれなかった。漸くジュディーをせき立ててテレビ局に滑り込み、廊下で一服してからまた先ほどの店に戻ってみた。皮の服はハンガーに吊して沢山あるのだが、どうも露出面積が小さい服ばかりで、こんな物がセクシーと言えるのだろうかと清には疑問に思えた。ビスチェと書いてある服が胸の上半分は出そうなデザインで、これはセクシーの部類に入るかなと思ったが、サイズが分からないので試着しないと買えないだろうなと思った。先ほどジュディーと来た時に応対した店員が寄ってきて
「さっきのはジュディーでしょ? 僕ジュディーのファンなんですよ」
と言う。