ジュディー-3
「キヨシー、何やってるの? こんな暗い所で」
「アー、驚いた。脅かさないでくれよ」
「目が覚めたら誰か此処に座ってるんだから、驚いたのはこっちよ」
「足音がしなかったから気が付かなかった。猫みたいに歩くんだな」
「だって気付かれたら何されるか分からないから足音忍ばせて来たのよ。そしたらキヨシじゃないの。ホッとして抱きついたのよ」
「心臓が止まるかと思った」
「何描いてるの?」
「アダルト・ショップの略図を描いてるんだ」
「何で?」
「君が仕事中に仕事場の近くのアダルトショップを廻ってセクシーな服装とはどんな物なのか勉強してこないといけないんだ」
「誰かにプレゼントするの?」
「違う。君が普段仕事でない時にもセクシーな服を着ているように目を光らせているのが僕の仕事だって社長が言うんだ。それでどんな服がセクシーな服か分からないんでは仕事にならないから、まずそこから勉強しろって言うんだよ」
「そんなの私が分かってるからいいわよ」
「うん、まあしかしそれが僕の仕事だから。それにいつもいつもセクシーな服装というのも疲れるだろう? ふっと気が緩んで普段着のまま煙草買いに出たりするようなことはあるんじゃないかと思ってね。そういう時は僕が買いに行くから君は普段着で外に出たりしたらいけないよ。これは社長命令なんだから」
「はいはい。それはそうとライト付ければ良かったのに」
「そんなことしたら折角眠ってる君を起こしちゃうじゃないか」
「優しいこと言うのね。そんなこといいのに」
「いや、寝覚めは誰でも機嫌が悪いもんだから」
「キヨシはそうなの?」
「まあ、誰かに起こされたりすれば」
「誰に起こされるの?」
「いや、独りだから誰かに起こされることは無いんだけど、起こされれば不機嫌になるだろうと思って」
「今日からアダルトショップ巡りか。楽しそうな仕事ね」
「さあなあ。そういう店入ったこと無いから」
「キヨシは童貞? そんな訳無いよね」
「え? それはどうでもいい。それよりそろそろ食事して支度しないと時間が迫ってきてる」
「食事なんて朝はサラダだけだから簡単よ」
「サラダだけ? そんなんで持つのか」
「持つわ」
「それでその立派な体を維持してるってことは夜相当食べるんだろうな」
「今に分かるわ。これからずっと私と行動を共にするんでしょ?」
「そうなんだ。君が起きてる間は貼り付いて離れるなって言われてる」
「私も社長に言われた。君の指名なんだから文句言うなって」
「うん、まあ厭なこともあるだろうけど仕事だから宜しくお願いします」
「あら、そんな他人行儀は厭だわ。それに私のことは君なんて言わないでジュディーって言って。君なんて言うのは失礼なのよ」
「え? 失礼なのか。分かった。それじゃ待ってるから早く支度してくれないかな」
「私シャワー浴びるからその間に冷蔵庫の野菜を洗っておいてくれると助かるんだけど」
「ああいいよ、それくらい」
「バスルーム鍵が無いんだけど、覗いたりしたら駄目よ」
「馬鹿な。そんなことする訳が無い」