ジュディー-2
「大体では困る。ではどんな服装が彼女に相応しいか言ってみろ」
「はあ。ま、ミニスカートとか、そんな奴ですか?」
「参ったな。セクシーな服装と言うとミニスカートしか思い浮かばんのか。君はアダルト・ショップには行ったことは無いか?」
「何屋さんですか?」
「大人のおもちゃ屋だ」
「ああ、無いですねえ」
「君はチンポ持ってるんだろうな。ジュディーが仕事中は君は其処を抜け出して近くのアダルト・ショップを片っ端から覗いてみろ。ジュディーが撮影されていたりインタビュー受けている時に君はポカンとしている必要は無い。いや、そんなことではいかんのだ。近くにあるアダルト・ショップを探して行ってみろ。そういう所に行けば男が女に着て欲しいと思っている服が沢山ある。それを見て良く研究しなさい」
「は」
「それからもう1つ。男とやりまくるのは一向に構わないんだが、妊娠は困るわな。腹が出っ張ったらポルノにならない。そういうのを好む男も勿論いるにはいるんだ。私も本当はそんなのが嫌いじゃ無いんだけど、まあそれはどうでもいい。が、しかし、そんな男は絶対数が少ないから商売にはならないんだ。分かるな」
「はい。それは分かります」
「それは分かりますって、今までのは分からないのか?」
「いや、分かりました」
「本当か? 頼りないな。まあ、そういう訳だから君は病院に行ってピルを貰ってきて毎日ジュディーに飲ませるんだ。ちゃんと飲み下したことを確認するんだぞ。口開けてベロどけて残ってないかどうか検査するんだ。薬を渡して飲んどきなさいなんて言うだけじゃ駄目だぞ」
「はい」
「分かったな?」
「あの・・・」
「何だ?」
「何処の病院に行けばいいんでしょう?」
「ああ、それはな。うちの専属の医師がいるんだ。石原真貴子君に聞けば教えてくれる」
「はい」
「君は朝から晩までぴったりジュデイーに貼り付くんだ。トイレと風呂の中以外は何処にでも付いていくんだ。それで文句言ったら俺が厭なら他の男が同じ事をやるだけの話だと言ってやれ。君はジュディーの御指名なんだからな」
「はい」
清はため息をつきながらまず電話帳でアダルト・ショップの一覧表を作成した。それからジュディーのスケジュール表の空欄に仕事先の近くにあるアダルト・ショップを書き込んでいった。取りあえず努力はするが最初から完璧な仕事など出来る筈が無いと思って、気楽にやることにした。出来ない事は出来ないのだから、それしか無いのである。
給料は一気に倍額に増やしてくれたけれども残業その他は一切付かないそうだ。仕事の時間は毎日12時間を越えそうだし、休日も当分はないという話だから、実質的には昇給と言えるのかどうか分からない。尤もこの不景気で残業したくとも出来ないというのが世間の一般なのだから、贅沢は言っておれない。ジュディーが起きるのは大体12時頃だということだから11時半には彼女のマンションに行ってなければならないだろう。スペアキーを渡されたということは、部屋の中にも勝手に入って良いということらしい。信頼されているのか、それともジュディーのプライバシーなんてどうでもいいと思っているだけなのだろうか。
そうっと鍵を廻して開けてみると広いワンルームで、入り口側にキッチンとユニットバスがある。その向こうが結構広くて奥の窓際に大きなベッドがある。分厚いカーテンから僅かに漏れてくる光でジュディーが寝ているのが分かった。音を立てないようにしてキッチンテーブルの椅子に座り、持参したスケジュール表と地図を取りだした。薄暗いけれどもジュディーが寝ているのだから電気を点けるわけにはいかない。スケジュール表に書き込んだアダルトショップの所番地を地図で確かめ、およその略図をメモ帳に描いていった。薄暗いというよりかなり暗いので、地図に顔をくっつけるようにしないと見えない。神経を集中して略図を描いていたら後ろからドサッと何かが覆い被さってきた。面食らって思わず「ワッ」と大声を上げてしまった。