ジュディー-15
「こっちはぎっしり詰まってるけど、そっちはスカスカじゃない」
「それは気のせいだろう。隣の芝生は青く見えるって奴さ」
「それは逆でしょ。普通は人のが多く見えなきゃいけないのに。まあいいわ。最初から沢山食べなさいっていうのは可哀想だから」
「そうさ。野菜なんてそんなに食べたこと無いのに急に沢山食べたら胃痙攣になっちゃう」
「大袈裟な。野菜と肉を沢山食べれば健康でいられるのよ」
「豚じゃあるまいし沢山食べりゃいいってもんじゃ無いだろ」
「いいえ、沢山食べて沢山出す。食べ物でも水でもそうよ。そうしていればいつも体の中がきれいになってるの」
「そうするとそういう体になる訳か。マリリン・モンローみたいな」
「あら、マリリン・モンローなんかより私の方がずっといい体しているわ」
「まあデコボコは確かにモンローよりあるかもな」
「そうよ。それにモンローは寝る時にシャネルの5番を着て寝るって言ったけど、私は男を着て寝るんだから、私の方がよっぽどセックス・シンボルに相応しいでしょ」
「男を着て寝るんじゃなくて男に乗っかって寝るっていう感じだな。この右手はどうしてくれるんだ」
「痛い?」
「痛い。それに片腕が効かないとバランスが崩れるっていうか、こんなに不便なもんだとは知らなかった」
「それじゃ今夜はこっち側に頭乗せて寝て上げるから」
「そしたら両方動かなくなっちゃうじゃないか」
「バランスが取れるじゃない」
「バランスが取れりゃいいってもんじゃないだろ。ジュディーの体重は一体何キロあるんだ?」
「マネージャーは私のスリーサイズと身長・体重くらい憶えていないと駄目ね」
「そんなの知ってるよ。僕が聞いてるのは公表の数字でなくて実際の数字を聞いてるんだ」
「実際の体重?」
「そう」
「厭あね、女性にそれを聞くのは失礼なのよ」
「それじゃ体重を公表してるのは一体何なんだよ。ともかく、僕より軽いか重いかだけでも教えてくれないか」
「キヨシはどれくらい?」
「僕は55キロ」
「55キロ? たったそれだけ? 良くそれで生きていけるわね」
「大袈裟だな。つまりそれより重いってことだな」
「さあ、ノーコメントね。原子力潜水艦と同じ」
「人の真似をするな」
「何着て行こう?」
「そうだな、ロング・インタビューで写真も撮るだろうから、セクシーでバッチリ決めないといけないな」
「昨日のゴムの服着る?」
「あれでもいいけどトイレが困るだろう」
「あ、そうね。そこまで考えなかった」
「僕の方が其処まで考えてるっていうのに暢気だな」
「女は小さいことにコセコセしないのよ」
「それは男のことだったんじゃないかな」
「だからキヨシも小さいことにコセコセしないの」
「は?」
「ボディコンにしよう。ボディコンが1番簡単でいい」
「それ?」
「これじゃ駄目かしら」
「いや、いいと思うよ。でも両脇が開いているから下着はどうするのかと思って」
「下着は穿かないの」
「ヘー」
「驚くことは無いわ」
「まあ、トイレが楽でいいな」
「キヨシはトイレのことばっかり考えてるのね」
「そういう訳じゃないけど、トイレでは1度酷い目に遭ったことがあるんだ」
「どんな?」
「おしっこしようと思ってトイレに行ったらチンポの皮がジッパーに引っかかってね。痛くて上げも出来ない、下げも出来ないってことになっちゃった」
「どうして? ブリーフ穿いて無かったの?」
「いや、穿いてたんだけど、ナイロンの薄い奴で、それごとジッパーに引き込まれちゃったんだ。それで具合の悪いことにタイトなズボンだったから慌てて個室の方に移って何とかしようと思ったけど何ともならなかった」
「で、どうしたの?」
「前を隠しながら自分の机に戻ってハサミ持って又トイレに行ったよ。でもハサミがあってもジッパーなんて切れるもんじゃないだろ。悪戦苦闘の末結局破いた」
「ズボンを?」
「ズボン破いたらトイレから出らんないじゃないか。ブリーフとちんぽの皮を破いたんだよ」
「ハサミで?」
「まさか。そんな怖いこと出来るかよ。何とか動かないかと試してる内に破けて外れたんだ。帰ってから薬買って付けたけど1週間痛かった」
「傑作ね。でもキヨシがナイロンのブリーフなんて穿くの?」
「昔の話さ」