ジュディー-10
「下手な駄洒落言ってる余裕があるなら食べなさい」
「駄洒落はお腹いっぱいだって言えるさ」
「駄目駄目。物を言えばゲップが出る程でなきゃ」
「そんな。お相撲さん育ててる訳じゃないんだから」
「はい」
「うっ」
「ほら、出したら駄目よ」
「酷いなあ。鼻をつまんで口を開けさせるなんて機械より酷い」
「それじゃもうしないから、あと1口だけ食べなさい」
「いや、僕はジュディーに食べて欲しいんだ。僕の食べ残しで悪いけど初めからナイフで切り分けたやつだから汚くはないよ。とてもおいしいから是非とも食べて貰いたいと思ってね」
「それじゃ私が食べて上げるからもう少し小さく切り分けて頂戴。そしたら食べて上げる」
「はい」
「馬鹿。キヨシの歯で切り分けるのよ」
「何で? そんなことしたら汚いじゃないか」
「マネージャーのこと汚いと思っていたらマネージャーなんかして貰えないでしょ」
「そんなもんかな」
「そうよ。だから口に入れて噛み砕いてから頂戴」
「え? そんなことこんな所で出来ますか」
「恥ずかしいの?」
「恥ずかしいんじゃなくて、マナーの問題。マナーを知らない人だな」
「このー、又私の真似して」
「そう?」
「呆れた。いいわ私が食べちゃう」
「しっかし良く食べるなあ。本当に何処に入るんだろうと思う程だね。ジュディーはきっと1回に1トンくらい排泄するんじゃないのかな」
「何? こらっ、人が食べてる時にそういう話をすんじゃない。マナーを知らない男ね」
「まーな」
「同じ駄洒落を何度も言うんじゃない」
「2回だけ」
「1回で沢山」
「それじゃ帰ろう。明日は早いから帰ったら直ぐ寝てくれよ」
「何時?」
「12時半だから僕は11時に迎えに行く」
「それなら早いっていう程でも無い」
「まあそうだけど、僕は今日は疲れた」
「どうして?」
「慣れない仕事だし、外を歩き回るなんてことは今まで無かったから」
「それじゃちょっと上がって」
「此処で帰るよ」
「キヨシの買った服試着して見せるから」
「あそうか。そうだな」
「何これ?」
「だから店員お勧めのセクシーな服」
「これってラテックスじゃないの」
「そうなんだって」
「そうなんだってって、こんな物着て外歩けると思ってんの?」
「それ着たら外歩いちゃいけないのか?」
「馬鹿。今着て見せるから。着れば分かるわよ」
「下着まで脱ぐことは無いよ。でも確かに黒じゃないね、茶色だ」
「何処見てんのよ」
「何処って、僕の目の前で裸になるんだもの」
「そういう時は目を瞑ってんの」
「僕の眼は閉じても瞼に少し隙間が出来ちゃうみたい」
「それは薄目を開けてるって言うのよ」
「なるほど」
「ちょっと手伝って。これは独りで着るのは大変だわ」
「扱いは丁寧にしないと破けると言っていたよ」
「だから引っ張ってよ。私は爪伸ばしてるから」
「ちょっと変な物を買っちゃったな」
「ちょっとじゃ無いわ」
「でも高かったんだ。5万円もしたんだよ」
「ちっとも高くない。私の持ってる服は皆それくらいよ」
「そうなのか。まあ仕事着だから高いのはしょうがないか」
「そうよ。私はいつも仕事着を2着着てるんだから」
「2着って?」
「1着はこれよ」
「あっ、裸のことか。なるほど、仕事着だね」
「痛い。皮膚が引っ攣れるからそんなに引っ張らないで」
「分かった。ちょっと脱いでごらん」
「何で? 折角此処まで着たのに」
「いいから」
「どうすんの?」
「ほら、こうするんだ。頭いいだろ」