オレの役目-1
内戦.....オレの国ではオレが生まれた時から常に起こっていた。
夜の静けさを切り裂く銃声、地面に仕掛けられた数えきれないほどの地雷、毎日が死と隣合わせだった。
オレの名前はデビット、もうすぐ8歳の誕生日をむかえる。でも、8歳にはなりたくない。なぜならオレの国では8歳の誕生日をむかえた者は兵士にならなければならない義務がある。兵士になど...なりたくない。人殺しなど...したくはない。
そんなオレの思いも虚しく。オレは8歳の誕生日をむかえた...。銃を持った兵士がオレを迎えに来た。逆らえば殺される.....。親から何度も聞かされた。オレはなんの抵抗もせず、兵士についていった。オレの後ろから見送る家族に振り向くことは出来なかった。
兵士が連れて来たのは学校くらいの施設だった。何人もの子供達が綺麗に並ばされて、一人一人の目の前に銃が置かれた。一人の兵士が言った。「銃を取れ!」ほかの子供達は一斉に銃を取った。オレも遅れながらも銃を両手で握りしめた。
中に一人、銃を取らない奴がいた。兵士はそいつに歩みよると静かに言った。「銃を取れ。」しかしそいつは銃を取ろうとはせず、兵士をにらみつけた。
「パン!!!」
一瞬の出来事だった。
兵士はなんのためらいもなく、その子供を撃った。親から何度も言い聞かされたが、現実は目の当たりにするとあまりにも残酷だった。
そして銃を取った子供達は全員、戦場に向かった。
「オレは必死で戦った。」
「何人も人を殺した。」
「しかたないよ、殺さなければオレが殺される。」
「生き延びるためにしかたないことだ。」
そう何度も自分に言い聞かせながら、銃の引き金を引いた。
一日を戦うと、施設に帰ることができた。食べ物にありつけた、安全な場所で眠ることができた。
でも毎晩うなされる、オレが殺した奴の悲鳴が...頭の中を離れない。
それでも生き延びるために毎日殺した。
「オレ達は、つくられた」
「殺人マシーンとして」
「誰か...この兵士どもを殺してくれないだろうか...」
何千回思っただろうか。
「この兵士どもをオレ達で団結して殺せないだろうか.....」
何万回思っただろうか。
だが、もし失敗したらという恐怖の鎖がオレを縛り続け、はずれることはなかった。
10年後、内戦は終わった。
普通の生活を初めて味わった。夜に銃声がなり響くことはないし、地雷もかなり少なくなった。
しかし.....夜に安眠することは出来なかった。
あの頃の記憶が夜になると今でも夢の中で蘇る。
死者の悲鳴、銃声、.....毎晩うなされる。
きっと.....忘れることは出来ないだろう。
オレのような人生を、次世代の子供達に味あわせるわけにはいかない。
オレは今、自分の過去を世間に伝えながら戦争反対運動を行っている。
オレの過去を伝えるのは、すごく苦しい.......
だがオレは伝え続ける。
それが...オレに出来る、精一杯の役目だから。