シルビア-9
「A? B? それともCまで?」
「何それ?」
「Aがキス、Bはペッティング、Cはセックス」
「馬鹿。姉ちゃんとは喋らない」
「本当に何処まで行ったの? 竜ちゃん」
「Zまで」
「Zって何? ねえ、シルビア」
「さあ、私もZは知らない」
「馬鹿、冗談だよ。健全な高校生がAだのBだのするか」
「そういうのって却って不健全なんじゃないの?」
「母さんはもう何言うんだよ」
「母さんの初体験はいくつの時?」
「小学校の時」
「ヒャー、負けた」
「2人ともそういう話はもうちょっと小声でしてくれないかな」
「純子ちゃんとは、次回に乞うご期待っていう訳か」
「次回は無い」
「どうして?」
「どうしても」
「ハァーン、何かあったんだ。そうで無きゃ店に来たりしないもんね」
「別に」
「それじゃ何で店に来たの?」
「子供が親の店に行ったらいけないの?」
「いいえ、しょっちゅう来なさい」
「ネ、本当に何があったの?」
「そんな透けた服着て胸をこすりつけてくるなよ。人が見てる」
「あら、大きいから当たるのよね。喧嘩でもしたの?」
「喧嘩なんかしてない。何でも無い」
「まあ失恋して男は大きくなるんだからね。くじけちゃいけないよ」
「誰が失恋したんだよ」
「失恋じゃ無いの?」
「飽きただけだよ」
「純子ちゃんに?」
「あのね、彼女、田丸って言うんだ」
「田丸純子ちゃん?」
「田丸さんって言ってくれよ。純子ちゃんなんて言われると誰のことだか分からなくなっちゃう」
「それじゃ田丸さんにどうして飽きたの?」
「知らない」
「知らない訳無いでしょ」
「自分でも分からない」
「そうか。そういうことって良くあるよね。姉ちゃんなんてしょっちゅうよ」
「僕は姉ちゃんとは違うよ」
「だって飽きたって今言ったじゃない」
「だから姉ちゃんみたいな気まぐれで飽きる訳じゃ無いんだ」
「じゃ何で飽きたの?」
「まあ、彼女の過去の行状にちょっと失望したと言うか、そんなようなことだよ」
「ギョージョーって何?」
「行い」
「何かやったの? その田丸って子が」
「あっ、分かった。そうかあ、それでか」
「何? それでかって」
「処女じゃ無いってコクられたんだ」
「そうじゃない」
「コクラレタって何?」
「告白された」
「若い人の会話は難しいね」
「今時高校生で処女なんていないよ、竜太郎君」
「何が竜太郎君だよ。姉ちゃんの通った高校とは違うよ」
「ナーニ、学力が違うだけで高校生の性意識なんて何処だって変わりないわよ」
「それじゃ聞くけど姉ちゃんは中学の時に処女失ったのかよ」
「そう」
「何? 中学でもう好きな男が出来た訳?」
「そうじゃないけどセックスってどんな感じなのかなと思ってやってみただけ」
「で、どんな感じだった?」
「母さん、セックスしたこと無いみたいな言い方しないでよ」
「呆れた。これって母と娘の会話だなんて信じらんないよ」
「竜太郎、今時処女に拘ったりしては駄目よ。そんなことしてたら小学生と付き合わないといけなくなっちゃう」
「放って置いてくれよ。彼女が処女かどうかなんて僕は知らないよ」