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シルビア
【青春 恋愛小説】

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シルビア-29

 「いい家族ね。本当に羨ましい」
 「あれが?」
 「そう。あれが」
 「母さんのあの服見ただろ?」
 「うん。ちょっとやっぱり変わってるね、あの服は」
 「それであの下は透け透けのパンツ穿いてんだぜ」
 「見たの?」
 「まさか。自分で言ったんだ、透けたのばっかだって」
 「へえ。独特のセンスなのね」
 「誰かさんのね」
 「え?」
 「いや、何でも無い」
 「お姉さんの服装にも驚いたわ」
 「そうだろ。家ん中だけじゃないんだ。外出て行く時だって大体あんな感じの服装なんだぜ。付き合わされる僕の身にもなってみろよ」
 「外出する時に付き合うの?」
 「いろいろあってね、それで借りを返してるんだ」
 「借りを返してるって?」
 「いやまあ、それはこっちの話」
 「お姉さん、顔は全く外人みたいな顔だったけど、髪は染めてるんでしょ?」
 「眼の色に気がつかなかった?」
 「気がついた。あれはカラー・コンタクトじゃ無いの?」
 「髪も眼も天然」
 「天然?」
 「姉ちゃんの親父は外人なんだ。僕とは種違いの姉弟なんだよ」
 「まあ、それ本当?」
 「うん。だから似てないだろ」
 「そんなこと無い。口元なんかそっくりよ」
 「ああ、口元が似てるっていうのは前にも言われたことあるな」
 「それじゃお姉さんはハーフなの?」
 「そう」
 「そうだったの。羨ましい」
 「何が?」
 「何がってあの顔と髪」
 「あんなのがいいの?」
 「厭なの?」
 「厭ということは無い」
 「素敵じゃない。眉毛なんかもそうすると自然の色だったのね。私は眉毛まで脱色して随分お洒落なんだなって感心してた」
 「眉毛もあそこの毛も白いんだ」
 「見たの?」
 「見る訳無いだろ。自分で言ったんだよ。母さんが透け透けのパンツ穿いてるって言ったら、私みたいに白い毛ならいいけど黒い毛が透けたら気持ち悪いって言ったんだ」
 「面白いこと話す親子なのね」
 「面白いなんてもんじゃ無いんだ。もっと信じらんないような話をするんだけど、それは言えない」
 「どうして? 教えて」
 「いや、うちの家族のプライバシーだから」
 「そうか。それじゃ聞かないけど羨ましいなあ。竜太君の家族って」
 「そうか? 別に羨ましいということはないよ」
 「今度うちに来る? うちに来てみれば分かるよ」
 「何が?」
 「私がこんなに羨ましがる訳が」
 「いいよ」
 「いいよって?」
 「田丸のうちに行くのは遠慮しておく」
 「何で?」
 「僕は人見知りするから」
 「そうだね。竜太君ってそういうとこあるね」
 「うん」
 「でも、それも竜太君の魅力だよ」
 「そうか?」
 「うん。だって人見知りする人が私には馴れ馴れしくしてくれるんだと思うと嬉しいじゃない」
 「そうか。そんなもんか」
 「そうよ」
 「それじゃ僕、中には入らないからね。此処で見てるから入りな」
 「うん。今日は有り難う」
 「うん。さよなら」
 「あっ、待って」
 「何?」
 「いつかABCやろうね」
 「え? 何のことか分かってるの?」
 「分かってる。順番どおりに少しずつやろうね」
 「ABCの順に?」
 「そう。だから取りあえず今はA」
 そう言って純子は飛びつくように竜太郎にキスした。そして驚いて棒立ちになった竜太郎に満面の笑みを見せながら玄関に入っていった。


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