シルビア-28
「竜太君、手料理作ったからそれで歓迎してるっていうもんでは無いのよ。日曜日なのにお店休んで私に会ってくれるとか、こんなに綺麗にお化粧してドレスアップして待っててくれるとか、そういうのが本当の歓迎なの」
「化粧とドレスアップは姉ちゃんの趣味なんだ。それに母さんはしょっちゅう店を休む」
「今日は特別にドレスアップしたの。バストアップまでしたんだから」
「バストアップって何?」
「バストがアップするっていうクリーム塗ってマッサージしたの」
「それじゃいつもは垂れてるのか」
「馬鹿」
「母さんも今日は特別に休んだんだよ。竜ちゃんの言うあいつっていう人が店に来る筈だったんだから」
「それはご免」
「いいんだよ」
「あいつって誰のことですか?」
「ああ、気にしないでいいのよ。何時でも会えるんだから」
「はあ」
「姉ちゃんはね、ドレスアップなんて言うけど大体いつもこんな服装なんだ。信じらんないだろ」
「でも素敵」
「それじゃこの服着てみる?」
「有り難う。でもいいです。まだそこまで勇気が出ないから」
「こういうのは慣れよ」
「慣れなくていい」
「慣れるといいもんよ」
「だから慣れなくていいの」
「竜太郎はセーラー服が好みなの?」
「そう。あれが1番清潔でいい」
「おじさんみたいな趣味だね」
「母さんはもう黙っててよ」
「竜太君この服嫌いなの?」
「いや、それはそれでいいよ」
「それうちで買ってった奴でしょ?」
「そうです。安くして頂きました」
「そんな感じの服なら私も持ってるんだけど上げようか。竜ちゃんが怒るかな」
「あ、あれか。いいよ、別に怒らない」
「あ、私が選んだ奴ね」
「そう」
「どんな服ですか?」
「貴方が店に来た時に私が着てた服なんだけど」
「わぁー、あれ欲しい。あれとっても素敵だった」
「私が選んだから」
「僕が買ったんだ」
「私が払ったのよ」
「いつか返す約束なんだから僕が払ったことになるの」
「出世払いなんて上げたのと同じよ」
「それじゃ貰った。もう返さない」
「狡い」
「それくらいあのハゲチャビンから貰えばいいだろ」
「何よ、ハゲチャビンは酷いでしょ」
「じゃ禿のおっさん」
「パソコン返せ」
「僕は返品お断り主義なんだ」
「都合のいいこと」
「何だか話の内容は良く分からないけど、仲が良くて羨ましい」
「そうでも無い」
夜も遅くなったので竜太郎は母さんとシルビアに言われるまでもなく純子を送っていった。