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シルビア
【青春 恋愛小説】

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シルビア-25

 「つまり母さんと私と服を取り替えっこすればいいんだ」
 「全然分かってないな、やっぱり」
 「分かってるわよ。任せなさい」
 「大丈夫なのかなあ」
 「大丈夫。おっぱいの透けない服にするから」
 「いや、田丸は女だからその辺はいいと思うけど・・・、いや、やっぱりおっぱいは見えない方がいいのかな。僕も段々感化されておかしくなってる。分からなくなって来ちゃったよ」
 「いっそのことありのまま見せたら? 真実に背を向けないで」
 「うーん。それが本来の姿であることは分かってんだけどね・・・」
 「その方が竜太郎も男らしくていいよ」
 「うーん。そう言われるとそんな気もするのは確かなんだ。一生現実から逃避する訳には行かないからな」
 「そうそう、逃避は良くない」
 「逃避って意味分かってる?」
 「分かってるわよ、1年で1番日の短い日でしょ」
 「それは冬至」
 「あっ、飲み屋で最初に出てくるやつ」
 「それはお通し」
 「すると・・・」
 「もういいよ。付き合ってらんない」
 「私達って仲が良くていいね」
 「別に」
 「仲がいいと思わない?」
 「姉弟だから当たり前だろ」
 「でも仲が悪い姉弟だっているのよ」
 「それはそうだけど、そんなの普通じゃないよ」
 「でも私達父親が違うのよ」
 「だから?」
 「だから普通じゃないでしょ?」
 「姉ちゃん何が言いたいの?」
 「父親が違うってこと気になったこと無い?」
 「別に」
 「どうして?」
 「母親が同じだからそれでいいじゃないか」
 「竜太郎はお父さんと仲良く一緒に飲みに行ったりとかそんなことしたいと思わないの?」
 「思わない」
 「頑固なんだね」
 「姉ちゃん、父親が分からないってことで悩んだりしてんの?」
 「別に」
 「なら変なこと言い出すなよ」
 「変なことって?」
 「父親が違うこと気にならないかなんて」
 「ああ。ちょっと思っただけ」
 「何で?」
 「竜太郎の眼と髪が私と同じ色だったら良かったのにって思ったから」
 「何で? 僕の色好きじゃないの?」
 「そんなこと無いけど、同じ色してれば直ぐ姉弟だって分かるじゃない」
 「そんなことどうでもいいよ。それにあのパソコン買ってくれたおじさんは同じ口元してるって言ってたじゃないか」
 「うん。あれで一遍にあの親父が好きになっちゃったのよね」
 「何で? 単純だなー。僕と似てるって言われるとそんなに嬉しいの?」
 「嬉しいよ。竜太郎と似てるって言われると自分のアイデンティティを確認出来たみたいに感じるから」
 「アイデンティティ? 何それ?」
 「だから私みたいな顔してると自分だけのけ者で誰とも血がつながっていないみたいな気がすることがあるの」
 「なるほど」
 「だから竜太郎と似てるって言われると嬉しいの」
 「そうか。でも、姉ちゃん禿げは嫌いだったんじゃないの?」
 「もう禿げて無いよ、あのおじさん」
 「え? 生えて来たの?」
 「まさか。少しずつ生えてきたように見せかける鬘があるって言ってたじゃない」
 「それをやってるの?」
 「うん。姉ちゃんがやりなさいって言ったの」
 「でもあれはベラボウに高いって言ってたじゃないか」
 「そんなの問題じゃないのよ。あの親父金なら腐るほど持ってんだから」
 「へー。でも何で?」
 「何が?」
 「何であいつにそんな鬘やれって言ったの?」
 「一緒に歩く時格好悪いでしょ、禿げじゃ」
 「へー。姉ちゃんあのおっさんと一緒に歩いてんのか」
 「うん」
 「まあ精々頑張って下さい」
 「何が?」
 「相手の家庭を破壊しない程度に」
 「あいつは独身なのよ」
 「へー。奥さんに逃げられたのか?」
 「どうして?」
 「だってショックで毛が抜け落ちるって言うじゃないか」


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