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シルビア
【青春 恋愛小説】

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シルビア-23

 「何で母さんが着る服だって言わなかったの?」
 「言わなかったっけ?」
 「言わなかったよ。竜太郎のガール・フレンドにプレゼントするんだって言ったじゃないの」
 「そんなこと言わないよ。ただプレゼントするって言っただけだ」
 「それじゃ私が誤解してるの分かっていて、何故言わなかったの?」
 「誤解してた?」
 「竜太郎が服を選ぶと悲劇の結末になるって言ったんだから私が誤解してたことは分かった筈でしょ?」
 「いいじゃないか。母さんに若々しい服をプレゼントしたかったんだ」
 「納得いかんなー」
 「そんな親父みたいな言い方すんなよ」
 「で、敗者復活戦はどうだったの?」
 「敗者復活戦?」
 「母さんから聞いたよ。純子ですって自己紹介してたって」
 「あ、それね。復活した」
 「復活して何処まで行ったの?」
 「ABCを経験してきた」
 「ABC全部?」
 「うん、順番はACBの順だったけど」
 「ふーん。つまり・・・キスしていきなり入れて・・・終わってから又いちゃついたって訳か」
 「さあね、僕はもう寝るから」
 「興奮して寝られやしないでしょうに」
 「別に」
 「あらー、クールですこと」
 「それじゃお休み。母さんとっても若くて可愛いらしかったよ。驚いた」
 「有り難う。店のみんなにも言われた」
 「美容院の件忘れちゃ駄目よ。来週行くからね」
 「分かった」

 「竜太郎、何浮かない顔してんの? 姉ちゃんと歩くのがそんなに厭なの?」
 「いや、そうじゃない。あっ、一緒に歩くのは勿論厭だけど、そんなことじゃ無いんだ」
 「それじゃ何? 何か悩みがあるんなら話してごらん、力になるから」
 「力になれるかな? なれるかも知れないな」
 「そうよ、だから何?」
 「田丸がうちに遊びに来たいって言うんだ」
 「いいじゃない、そんなこと悩むことない。大歓迎するよ」
 「でもさ。母さんがいるだろ?」
 「母さんなんかいないよ。いつも店に行っててうちにはいないじゃない」
 「そうだけど、友達連れてくるって言えば店なんかほっぽり出して家にいるよ。母さんのことだから」
 「それはそうね」
 「田丸が割引してくれたお礼をしたいから又店に行って挨拶させてって言うんだ。それで『いいよ、それなら店じゃなくてうちに来ないか』って言っちゃったんだよ。でも言ってから気が付いたんだ。母さんなら、きっと日曜でも店をほったらかして家にいるだろうなって」
 「母さんがいたら何かまずいの?」
 「まずいって、もう服をプレゼントする口実なんかないもん」
 「プレゼントするのに口実なんて要らないのよ」
 「そうか?」
 「でもプレゼントする必要はないよ」
 「何で?」
 「母さんがいつもの服装でいて何が悪いの?」
 「何が悪いって、普通じゃないもん」
 「私の服装だって普通じゃないよ」
 「そうなんだ。こうなって気が付いたんだけど、姉ちゃんみたいな服装の方がまだよっぽどマシなんだなってつくづく思ったよ」
 「あのね。マシっていうのは褒めてることになんないのよ」
 「褒めてるんだよ」
 「褒めてない」
 「それじゃ何て言えばいいの?」
 「セクシーでいいねとか、似合ってるとかいくらでも言い方はあるでしょ?」
 「まあセクシーは確かだな」
 「そうでしょ?」
 「どうでもいいんだけど、それって下着は穿いてるの?」
 「どう思う?」
 「さあね。考えたくもない」
 「何でよ」
 「姉ちゃんの下着のこと考えたりするのは変態だよ」
 「そうか。実は穿いて無いの。尤もパンストは穿いてるけど」
 「何だか臭そう」
 「馬鹿」
 「それで何とかなるのかな?」
 「何が? トイレに行く時のこと?」
 「トイレ?」
 「トイレに行く時はね、全部脱いでトイレの中で素っ裸になっちゃうのよ。だってこういう服だから」


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