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シルビア
【青春 恋愛小説】

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シルビア-2

 シルビアは短大に通っていた頃、六本木のカジノ・バーでバニー・ガールのアルバイトをしていた。そろそろ卒業するという時期でどうしようか迷っていた頃に、客として来た葉子という女に「うちの店でホステスをしないか」と誘われた。ノルマも何も無しで1日1万5000円払うと言われたのである。それで取りあえずはホステスでもやってみようかという軽い気分でホステスを始めた。
 葉子の方は若い頃から銀座で店を持って営業してきた努力家で、良い客も沢山持っている。 店に来る者の殆どは葉子自身の客なのだからホステスの持っているお客を当てにする必要は無い。しかし勿論自分1人という訳には行かないから何人かホステスを雇っているが、可愛いホステスはお客をさらって別の店に直ぐ移ってしまう。40を過ぎて容色の衰えを自覚してくるとそういうことが酷く精神的に応えるので、知らず知らず雇うホステスは皆そこそこの女になってしまうのであった。その結果として店のホステスはどれも化粧を落とせばそこらにいる普通の女と変わりないというような女ばかりになってしまった。常連の何人かに「ママの店は華がない」と言われてそのことに気付き、これはいけないと思い、看板娘を1人入れようと考えた。
 客に連れて行かれたカジノ・バーでバニーガールをしている際だった美人が外人のように見える日本人だと分かって、これを引き抜こうと思った。髪をこんな色に染めている女なら、客を引き抜いて他の店に移るような気の利いた真似をする程の頭は持っていないだろうと思ったのである。シルビアという名前も髪の色も全部本物と分かったのは後のことである。しかしシルビアはいつまでもホステスをしているつもりは無いから勿論客を引き抜こうなどという考えは無く、ママの葉子もそのことが分かってきてからは、シルビアを可愛がっているのである。

 「竜太郎明日何か予定ある?」
 「別に無いけど何で?」
 「そしたら昼を奢るからちょっと手伝って欲しいの」
 「いいよ。何?」
 「ジュエリー・ボックス買いに行くから一緒に行って欲しい」
 「えー。出かけるの? 厭だな」
 「何で? いいよって言ったじゃない」
 「出かける用だとは思わなかったから」
 「姉ちゃんと出かけるのがそんなに厭なの?」
 「うーん」
 「偶には付き合いなさい」
 「ジュエリー・ボックス買うのに何で僕の手伝いが必要なの?」
 「紫檀で出来たこれくらいの奴だから重いのよ。帰りに持って欲しいの」
 「配達してくれないの?」
 「直ぐ使いたいの」
 「それじゃ化粧しないでジョギング・シューズ履いてくれる?」
 「ジョギング・シューズなんて持って無いもん」
 「僕の貸してやる」
 「竜太郎のデカイ靴なんて履ける訳が無い」
 「綿でも詰めればいいじゃないか」
 「何で? ハイヒール履くと私の方が背が高くなるから厭なの?」
 「そんなの関係無いけど」
 「じゃ何?」
 「それじゃあんまり派手な服着るなよ」
 「どうして?」
 「みんなジロジロ見るから厭なんだ」
 「みんなが見るのは私のことを見るのよ。竜太郎のことなんか見やしない」
 「見るさ。こいつはこの女の何なんだって眼で」
 「弟だって言えばいいじゃない」
 「聞かれれば応えるけど、聞かれてもいないのに僕は弟なんだっ、恋人じゃないって叫びながら歩く訳に行かないじゃないか」
 「どうして? 恋人だって誤解されると迷惑なの?」
 「迷惑さ。僕は健全な高校生なんだ。姉ちゃんみたいな派手な女が恋人だなんて思われたくない」
 「何言ってるの。結構派手めな女の子が好きじゃない。知ってるよ、姉ちゃん」
 「派手めならいいけど、姉ちゃんはド派手だもん」
 「文句言うんじゃないの。母さんよりはだいぶマシでしょ」
 「母さんは宇宙人だから比較になんない」
 「ぐじゃぐじゃ言わないの。私だって好きでこんな顔に生まれてきた訳じゃないんだから」
 「だから普通の服着ればいいんだよ。ジーパンかなんか持ってんだろ?」
 「ジーパンは無いけど、それじゃスカートでなきゃいいんでしょ?」
 「まあ、それで妥協しよう。その代わりうんと美味いステーキ食べさせて貰う」
 「うん。それで手を打った」


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