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シルビア
【青春 恋愛小説】

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シルビア-18

 「何が?」
 「田丸の好みの服は無い」
 「じゃどんな服が置いてあるの?」
 「どんなって・・・女の服なんて見ても分からない」
 「それじゃ私の好みの服が無いってどうして言えるの? 大体私の好みなんて知ってるの?」
 「セーラー服だろ」
 「セーラー服は制服だから着ているだけで別に好みでは無いわ。それに第1ブティックにセーラー服買いに行ったりしないわよ」
 「ブティックなんて掃いて捨てる程あるだろ。何もあそこに行かなくたって」
 「そうだけど、どうして?」
 「何が?」
 「お母さんのお店に行って買い物したら何かまずいことがあるの?」
 「そんなことは無い、何も無い」
 「じゃいいじゃない、ね? お願いだから付き合って」
 「僕と行ったって安くなんかしないよ」
 「安くしてくれなくてもいいの」
 「どうして母さんの店で買いたいんだよ」
 「だってお礼がしたいから」
 「何の?」
 「この間コンサートに連れていってくれたじゃない」
 「あれは僕にお礼すればいいんだ。母さんは関係無い」
 「だから竜太君にお礼するから」
 「母さんの店で買い物したってお礼にならない」
 「分かってる。その後ちゃんとお礼するから、竜太君に」
 「僕に?」
 「ABCって知ってる?」
 「え?」
 「凄くいいのよ。私竜太君に教えて上げたいと思って」
 「ABCを?」
 「うん。だからお願い、買い物にも付き合って」
 「う、うん。勿論」

 竜太郎は俄然人生の霧が晴れ渡ったような思いである。ABCと言っていたからフルセットで全部やらせるということなのだろう。しかし問題は母さんの店に行くということにある。あの魔法使いを見たら一遍に幻滅して竜太郎から逃げ出してしまうに違いない。此処はなんとかしないといけない。男になるかならないかの瀬戸際なのである。

 「姉ちゃん、ちょっと頼みがあるんだけど」
 「何?」
 「買い物に付き合って欲しいんだ」
 「まあー、珍しい。どうしたの?」
 「ちょっと服を買いたいと思って」
 「買って欲しいの?」
 「金ならある」
 「見立てて欲しいのか」
 「一緒に行ってくれればいいんだ」
 「よーし、いいわよぉ。いよいよ竜太郎も洒落っ気が出て来たのね。そう来なくちゃ」
 翌日2人は新宿へ買い物に行った。シルビアは相変わらず派手な服を着ているが今日は竜太郎から頼んだので文句は言わない。しかし股間の見えそうなミニでそのミニの中まで伸びているロング・ブーツを履いている。どこまであるのかつい覗いてみたくなってしまうようなブーツであった。
 「そのブーツは一体何処まであるの?」
 「ブーツ? ブーツなんて履いてないよ」
 「それはブーツじゃ無いの?」
 「良く見てごらん。普通のハイヒールを履いているだけよ。ラテックスのタイツと似てるから1つに見えるんでしょ」
 「ラテックスのタイツ? コンドームみたいなタイツだな」
 「そう。このままセックスすればコンドームは要らない」
 「そんなこと出来るの?」
 「どうかな? やったこと無いから分からないけど、やってみる?」
 「馬鹿」
 地下街に降りるとシルビアが紳士服の店に入って行こうとするので竜太郎は慌てて近づいた。二の腕を掴んで引き戻しながら
 「違う、違う」
 と言った。


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