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シルビア
【青春 恋愛小説】

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シルビア-13

 「僕は見ても楽しいとは思わないけど」
 「年取ると楽しくなるのさ、こういうのが」
 「そうですか」
 「竜太郎、何が食べたい?」
 「何でもいいよ。熊本ラーメンでなきゃ」
 「熊本ラーメン?」
 「うん。だからそれ以外なら何でもいい」
 「こんな服着てラーメン食べる訳無いでしょ?」
 「それじゃ何でもいい」
 「エスカルゴって食べたことあるかい?」
 「何ですか? それ。メキシコ料理?」
 「いや、フランス料理」
 「カタツムリよ」
 「カタツムリ?」
 「そう」
 「でんでん虫のこと?」
 「でんでん虫かあ。懐かしいね、その言い方」
 「そんなの食うの?」
 「そう」
 「厭だな」
 「これが結構美味いんだよ。フランス料理では高級なメニューなんだ」
 「僕は低級な奴でいいです」
 「竜太郎はグルメじゃ無いからね。食べ慣れたもんしか食べないんだよね」
 「そうでも無いけど」
 「何が食べ慣れてるのかな?」
 「1番のご馳走はステーキです」
 「ステーキか。それはいいね、僕も大好きだ。尤もそのお陰でこんな体になっちゃったんだけど、ハッハッハ」
 「はあ」
 「竜太郎君は若いから大丈夫だよ。腹が出るのはまだ40年くらい先のことさ」
 「僕もそうなるんですか?」
 「まあ美味い物ばかり食べてるとこうなっちゃう」
 「頭も?」
 「頭? これは遺伝」
 「良かった」
 「お父さんは禿げてないのかい?」
 「ふさふさしてます」
 「それは羨ましい」
 「その代わり全部白髪です」
 「白髪はいいよ。染めればいいんだから」
 「禿だって鬘があるじゃ無いですか」
 「鬘ねえ。何処か知ってる人のいない所に引っ越すんなら鬘してもいいんだけどね」
 「でもテレビでやってますよ。少しずつ生えてきたみたいに少しずつ毛を増やすっていう奴」
 「君、あれはべらぼうに高いんだ。それにそんなことしたって周囲の人には分かっちゃう」
 「そうかな、やっぱり」
 「そうさ。いろいろ僕も研究したんだ」
 「ブラシで頭を叩くと刺激で生えてくるそうですよ」
 「そんなことはとっくにやってる」
 「そうですか」
 「竜太郎君はしかしシルビアほど肌が白く無いんだね。どっちに似たのかな」
 「さあ、どっちも白くないですよ」
 「ほう。するとシルビアは突然変異なのかな」
 「病気なんじゃないんですか」
 「馬鹿。変なこと言うんじゃないの」
 「へへ、冗談」
 「竜太郎、パソコン買って貰って少しハイになってるね」
 「ハイ」
 「下手な洒落」
 「帰ったら母さんにインターネットねだらないといけないんだ」
 「インターネット? パソコンだけじゃ出来ないの?」
 「電話線に繋がないといけないんだ」
 「電話線ならあるから繋げばいいじゃない」
 「そしたら電話がずっと話し中になっちゃうだろ」
 「もう1本電話を引けっていうこと?」
 「違う。ISDNっていう電話回線があってそれに取り替えればいいんだ」
 「そんなこと?」
 「それがちょっと金が掛かる」
 「いくらくらい?」
 「なんやかんやで毎月1万円近く」
 「なあーんだ、それくらいか」
 「母さんもそう言ってくれるかな」
 「さあね、私は母さんじゃないから分からない」
 「母さんになったつもりで考えてよ」
 「私が母さんになったつもりで『いいよ』って言っても意味無いじゃない」
 「それもそうだな。姉ちゃんから母さんに頼んでくれないかな」
 「何で?」
 「僕が何か頼むと決まって父さんに頼んでごらんって言うんだ」
 「そうだよ。そういうことはお父さんに頼まないといけないね」


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