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シルビア
【青春 恋愛小説】

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シルビア-11

 「30万のパソコンかあ。夢みたいな話だなあ」
 「竜ちゃんパソコンが欲しいの? だったら父さんに頼んでみたら?」
 「イヤダ」
 「駄目よ。母さん、2人の話に割り込まないの」
 「でもパソコンくらい買ってくれると思うよ」
 「要らない。あいつに買って欲しく無い」
 「誰が買ってもパソコンに変わりないじゃない」
 「それでも厭だ」
 「厭よねー。母さんはデリカシーが無いから少年の気持ちが分からないのよ。姉ちゃんの話に乗ろう」
 「何時から何時?」
 「何が?」
 「だからその客とのデート」
 「まだ決めて無いから分からない」
 「時間を決めてくれないかな」
 「どうして?」
 「終わる時間が分かってれば我慢も出来る」
 「なるほど、それもそうね。分かった、そうしよう」
 「頭いいだろ」
 「服の文句は言わないのよ。パソコンがかかってんだから」
 「いいよ、何着ても。僕は少し下がってついてくから」
 「駄目。私と一緒に歩くの」
 「その男が怒るだろ」
 「だからいいの」
 「そしたらパソコンがフイになっちゃうじゃないか」
 「その時は姉ちゃんが買って上げるよ。20万のだけど」
 「夢を膨らませておいて萎ませるのかよ」
 「もともと欲しかったのは20万なんでしょ」
 「30万でもいいって言われた途端に欲しい奴が変わっちゃったんだ」
 「どうしても30万のが欲しかったら父さんに頼みなさい」
 「父さんなんて言うなよ。姉ちゃんの父さんじゃないだろ」
 「だからよ。竜太郎の父さんじゃないの」
 「イヤダヨ」
 「それなら客が怒らないことを祈るのね」
 「やっぱり天から降ってくるみたいな訳には行かないんだな」
 「何?」
 「それなりの代償を払わないと手に入らないっていう意味」
 「そうそう。良く分かってるじゃない」
 「あーあ」
 「ため息なんかつかないの。若いのに」
 3人はタクシーで家に帰った。魔女とアラビアン・ナイトに挟まれて歩くのは厭だから竜太郎が疲れたと言って強引にタクシーにしたのである。

 客とのデートは6時から12時までだという事になり、店が閉まる前に買い物しないといけないから、真っ先にパソコン・ショップに行くということになった。シルビアは金色のスパンコールで埋め尽くされたタイトなロングドレスを着ている。上は胸までしか無く、肩が露出している。白い肌を露出するのがシルビアの好みのスタイルなのである。前から見ると乳房の上半分が膨らんで露出し、後ろから見るとスパンコールで光り輝くドレスの尻が膨らんでいて、まるで人魚である。

 「そんなの着て街を歩くの?」
 「そうよ。透けて無いでしょ?」
 「透けて無きゃいいってもんじゃ無いだろうに」
 「竜太郎は私が何着ても文句言うわね」
 「文句言いたくなるような服しか着ないからだよ」
 「この服の何処が気に入らないの?」
 「そんな派手な服着てたらお客がびっくりしてパソコン買う前に逃げ出しちゃうよ」
 「残念でした。姉ちゃんのお客はみんな派手好きなのよ」
 「それはそうだな。地味好きなら姉ちゃんとデートしたがる訳無いもんな」
 「そうよ。だから気張って派手な服着たの。竜太郎のパソコンの為に必死なのよ、姉ちゃんも」
 「嘘付け。派手な服が好きなだけじゃないか」
 「まあ、それもある」
 「歩く時僕に近づくなよ」
 「どうして?」
 「その光るやつがチクチクするから」
 「そんな細かいこと気にしないの。一緒に歩くっていうのが始めからの約束だったでしょ」
 「やっぱり楽してパソコン手に入れようなんて考えたのが浅はかだった」
 「たったの6時間の辛抱よ」
 「6時間て長いよ。飛行機に乗ったら何処まで行けると思うの」
 「さあ、沖縄くらいかしら」
 「冗談じゃないよ。インドくらいまで行けるよ、きっと」
 「それじゃインドまで、いざ出発」


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