おデブ奈央子の人間観察-1
わかってる。
あたしはどーせデブですよ！
「奈央子、チョー気持ちイー！持って帰りたぁ〜い！」
「すっごいふにふに〜。抱き枕みたーい。」
はいはい、あたしの肉が気持ちいいんでしょ。
それじゃ遠回しにデブって言ってんのと同じだっつーの。
「あー、ダイエットしなきゃぁ。足すっごい太くなっちゃったし。」
それはあたしへの当てつけか？そんな細い足して、何言ってんだよ！あたしのと比べてやろうか！？
「どこが太い足なのよ！ホラッ！あたしのと比べたらゴボウと大根じゃないのさっ！」
「えぇー。奈央子の足細いじゃん。」
だったらあたしの足と交換してやろうかっつーの！
あー！腹立つ！なんなの女ってのはどいつもこいつも太い太いって！本当に太いあたしに言わせてもらえば、おまえ等ふざけんなよって言いたいくらいよ！
そもそも女ってのは陰険で陰湿なくせに、妙に仲間意識とか強すぎんのよ。可愛い子がちょっとブリッ子すりゃ、何あの子ブリッちゃって超キモい。死ねば？とか言ってくれちゃってんのに、あたしらみたいなデブやブスがブリッ子したら、可愛いだの面白いだのもっとやってだの…、見下しすぎなんだっつーの！
はぁ、思いっきりグチっちゃったじゃないの。
久しぶりにこんな長くしゃべったから、息も絶え絶えよ。
とにかく、女は怖いわ。腹の中の裏の裏じゃ、何を考えてんのかわかったもんじゃないわよ、女って生き物は。
あたしも男に生まれたかったわ。男みたいなサッパリとした関係、憧れるねー。時には殴り合ったりしちゃって？クスッ、いつの時代の友情だよ。
あーあ、なんで女に生まれて来ちゃったんだろ。もうこぉんなドロドログチャグチャした友達関係たくさんだわ。
…あたしも一年の時は、女の友情も捨てたもんじゃないって思ったけど、やっぱ女は女ね。何ヶ月もかけて仲良くなったっていうのに、ちょっと自分と合わないところ見つけただけではいサヨナラ。
三年になっても変わらないわね。少しは大人になると思ったのに、気に入らない奴はとことんシカトでとことん陰口。
まぁ、話し合わせてるあたしもあたしなんだけどねー。
デブは見た目悪いから、中身はその分良くしないと嫌われるからね。
あー、こう考えるとやっぱあたしも女だわ。
キンパチ先生とかに出てる生徒で、やたら明るくて正義感の強いデブって一人くらいいたじゃない？あたしはそのタイプなんだと思うわ。
「奈央子ぉ？なにぶつぶつ言ってんのぉ？」
やだ。声に出てたみたいだわ。
「別に？それより果菜、次移動じゃないの？」
「え！やっばぁ！あたしあいつから目ぇつけられてんだった！急がないとぉっ！」
あたしの友達、果菜は超のつく天然。天然だから素直で、思ったことはすぐ口にしてしまう。
そんな果菜は、あんまり女子から良く思われていない。
あの天然は人工的だとか、男に媚びてるだとか、無神経だとか、可愛いからっていい気になるなとか。
あたしから言わせてもらえば、男の前と女の前でしゃべり方が全然違うあんたらのがよっぽど媚びて見えるし、陰でこそこそ悪口言いたい放題、普段は冷たく当たるくせに調子のいいときばかり友達面して、ホンット性根の腐った女の象徴よあんたらは。
早く卒業したいわね。
こんなデブじゃ恋愛も期待できないし。
彼氏ほしいとか言えるのは可愛い子の特権よね。
自分には彼氏が出来るっていう自信がないと彼氏欲しいなんて言えないわよ。
…こんなとき、あたしみたいなデブが主人公の物語だったら、ちょっと気になる男の子に告白してみたら両思いだった、なんてストーリー運びになるはずなのに、現実はそう甘くないのよ。人生楽ありゃ苦ありって言うけど、大半が苦っつーのもどうかと思うわね。
あっ、やば。今日も考え込みすぎて授業聞いてなかったわ。
もうすぐテストだし、気合い入れなきゃね。
デブだってやるときゃやんのよ！
…極たまにね☆
さぁて、次は何を観察しようかな。