悦子-16
「仰るも何も、事実を観察して指摘しているだけさ」
「先生の悪趣味には、私赤面させられます」
「そうか? 赤面してるのか?」
「厭です。そんなに覗き込まないで下さい」
「それより早く脱ぎなさい。いつまでも礼服なんて着てるんじゃない。気持ちが滅入ってしょうがない」
「はい」
「おっ、ブラジャーもお揃いをしていたのか」
「はい」
「それはなかなかいいなあ」
「お気に召しましたか?」
「ああ、そのブラジャーはおっぱいが透けていて誠に宜しい。大いにお気に召した」
「良かった」
「でも、それも取りなさい。それを付けているとおっぱいにかぶりつけないからな」
「又、そういう仰り方をなさる」
「どういう風に言おうとやることは一緒さ」
「こんな明るい所で恥ずかしい」
「うん。いい体しているな。顔に似合わず成熟したビーナスみたいだ」
「先生。電気を消すか先生もお脱ぎになるか、どちらかにして下さい。私一人こんな明るい所で裸でいるなんて恥ずかしい」
「それじゃ先生もお脱ぎになろう」
栄一は悦子の目の前で服を脱いで裸になった。悦子の腕を取ってベッドに引っ張り込み、直ぐに結合してから体を起こして悦子をだっこするような格好でベッドのへりに座った。その格好のままで少し酒を飲もうと思ったのである。しかし何しろたった1回のセックス経験しか無い女だから、栄一がベッドのへりに座って「此処に跨って座れよ。繋がったまま酒を飲むんだ」などと言ってもどうして良いのか分からないだろうと思って、自分からそういう体勢になるように仕組んだのだった。
「ちょっとこのまま暫く酒を飲むぞ」
「恥ずかしい」
「もうキスマークも歯形も消えてしまったな」
「はい。何時までも残っていたのですが」
「キスマークというのはなかなか良いものだろう?」
「はい。痛くて、その内仰る通り段々痒くなってきました。消えるまで其処から意識が離れなくて、何をしている時も先生のことを考えてしまうんです。先生と繋がっているのだなという感じを実感させられました」
「繋がっている? 今みたいに?」
「そういう意味ではありません」
「性器の方はどうだった? 杭を打ち込まれたような感じはしなかったか?」
「それは・・・、恥ずかしいこと聞かないで下さい」
「恥ずかしいことは無い。どんな感じだった?」
「はい。やはり3日ほど、何かが中に入っているような感じが抜けなくて困りました」
「困ったのか? 困って濡れたんだろう?」
「知りません」
「下着はいくつ買った?」
「は? あれ1つで御座います」
「今日初めて着たのか?」
「はい」
「黒いのは初めてだと言ったな。全部白なのか?」
「薄いピンクとかブルーは持っておりますけど、大部分は白い下着です」
「そうか。透けた下着は他にも持っているか?」
「いいえ。持っていません」
「それでは少し興奮しただろう、あれを穿いて」
「興奮したというのとはちょっと違うと思いますけど、平静な心ではいられませんでした」
「どんな気持ちだったのだ?」
「ですから、何か自分がおどろおどろしい世界に脚を踏み入れてしまったような安らかならぬ気持ちがしました」
「おどろおどろしい? 多寡が黒いパンティで」
「だって透けているんですもの」
「透けていたって服を着ているじゃないか」
「ですから黒い服でないと安心出来なくて」
「良し。それじゃ今度奮発して服を買ってやろう」
「え? そんなこと先生にして頂いては罰が当たります。ですけど、どんな服を買って下さろうとお考えなんでしょうか?」
「恥毛が透けそうな服だ」
「え? そんな服着られません」