悦子-12
「大分素直になって来たな」
「先生」
「何?」
「私の為に何か1つ歌を詠んで下さい」
「今?」
「はい」
「驚いた。蛙みたいに仰向けに足を開いて串刺しにされているというのに歌を詠んでくれと言うのか」
「そんなこと仰らないで下さい」
「そうか。出来たぞ。『串刺しにされた蛙の白い腹 よくよく見れば山本悦子』」
「そんなの厭です」
「今度の雑誌にこれを載せて貰おう」
「厭です」
「たまには解説文を付けて具体的な状況を説明してやろうかな。編集者兼発行人の山辺は僕の友達だから無理がきくんだ」
「そんなにふざけてばかりいないで下さい」
「それとも偶には小説を書いてみようかな。僕と君をモデルにして今日の出来事を詳細に客観的に実験記録のような小説に出来ないもんかな」
「それも厭です」
「とか言いながら又おつゆが溢れて来たぞ」
「嘘です」
「嘘じゃないさ。君のおつゆは臭いなあ。匂いが立ち上って来る」
「嘘」
「君には匂わないか? 鼻が曲がりそうな程臭い。チンポが立ってしまう」
「先生は汚い物がお好きなんですね」
「すると君は汚い女だということになるのか?」
「いいえ間違えました。綺麗な物をわざと汚く貶めるのがお好きなんです」
「すると君は綺麗な女だということになるな。都合のいいことを言う」
「私のことを言っているのではありません」
「何のことを言ってる」
「一般論として先生の嗜好を申しています」
「ふん。分かったようなことを言うな。本当に汚い物が好きなのかどうか今に分かる」
「楽しみにしております」
栄一は体を繋げたその体勢のままで、グラスを引き寄せて又飲み始めた。肴を食べる為に置いてあった箸が転がって遠くへ行ってしまったので、指で食べた。さっき悦子の尻に入れた指はティッシュで拭いたけれども、その指を使うわけにはいかない。からすみとキャビアの付いた指を悦子の脇腹に擦り付けて綺麗にしていると悦子は眉をひそめたが、何も言わなかった。それほど精力が強い方では無いので、いつの間にか性器は萎んで抜けてしまったが、体はそのままにして飲んでいた。悦子はたった今まで処女だったというのに男の体を挟む格好に脚を拡げられて仰向けに横たわっているのである。初めてのセックスで体から力が抜けてしまったのか、おとなしくしている。視線を下げれば悦子の開いた股間があるのだから、栄一は片手で悦子の性器を好きなようにもてあそびながら飲んでいる。栄一の出した白いものが大量に流れ出してベッドを汚しているというのに慌てもせずに、「やあ、エロイ、エロイ」などといって喜んでいる。
「あのな」
「・・・」
「聞いてるか?」
「・・・」
「茫然自失してるのか?」
「聞いています」
「今僕の出したミルクが流れ出て来たんだけども、分かるか?」
「分かります」
「ほう。しかし何かが膣の中から出てくるというのは、今始めて経験したんだろ?」
「先生のお馬鹿さん」
「へ?」
「女性は誰でも毎月1回そういう経験をします」
「むむむ。生理のことを忘れてた。何しろ僕には生理がきたことがないから」
「当たり前です」
「あのな。えーと今度いつでもいいんだけど、ちょっと頼みがあるんだ」
「何ですか?」
「あの、どうしても嫌ならいいんだけど」
「ですから何ですか?」
「いつか僕のミルクを口で受け止めて、そのまま飲んでくれないかな」
「え?」
「いや、どうしても嫌ならいいんだ」