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妙子2
【その他 官能小説】

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妙子2-8

 「久美です。今日は初対面なのにご馳走になります」
 「ナンバー1なんだって?」
 「そういう時もあります」
 「毎月そうじゃない」
 「エリカさんに抜かれたこともあるわ」
 「ナンバー1の秘訣は何だ? 顔と体だけではナンバー1になれないと思うけど」
 「顔と体は関係ありませんよ。お客さんを大事にすることが秘訣です」
 「大事にするって、具体的にはどんなこと?」
 「指名してくれたお客さんの隣に座っている時は、その人のことを本当の恋人だと思いこむの。それでそういうつもりになって接するのよ」
 「それは言うのはたやすいが実際にやるのはなかなか難しいだろう」
 「そうなんです。私もそれが出来るようになるまで随分かかりました」
 「それって例えばどんなことするの? 恋人と思いこんで接するって?」
 「具体的にどういう事をするっていうことはないの。ただ、貴方と一緒にいられて嬉しいわって思いこむの。そういうつもりになるっていうんじゃなくて、本当に思い込まないと駄目なのよ。そうすると表情だって何だってお客さんと一緒にいるっていうのとは違ってくるのよ」
 「そしたら体を触られてもそのまま触らせておくの?」
 「そういう時は、『こんな所では駄目よ、人が見てるわ』とか、『人前では毅然としていて欲しいな』とか言うの」
 「そしたらデートした時は触らせるの?」
 「そういう人とはデートしないの」
 「賢いんだな」
 「でも、デートを断るのが難しいんですよ。だって本当の恋人だと思って接しているんですから」
 「それはそうだな。そういう時だけ『お客さんとはデートしないの』とは言えないしな」
 「だから結婚する為に2人とも頑張ってお金を貯めていることにしちゃうんです。それで『無駄遣いしないで2人の為にお金を貯めないといけないでしょう?』と言うんです」
 「そうすると君と結婚出来ると勘違いして、ますます熱を上げる男が出て来そうだな」
 「ええ。でも熱を上げてくれないと通ってくれませんから」
 「若い奴ならすぐのぼせ上がるだろう」
 「あら。そういうのって年に関係ありませんよ」
 「ねえ、それってお客さんを騙しているんじゃないの?」
 「うーん」
 「あのな、妙子」
 「何?」
 「ホステスというのはお客を騙してナンボの商売なんだ。男は騙されに行くんだよ」
 「そうなの?」
 「そうだ。店にいる時だけでも恋人と一緒に過ごして酒飲んでる気分にさせてくれるんなら上等だ。金を払う意味は十分ある。それをホステスに騙されたと言って騒ぐ奴がいたら、そいつが悪いのさ。騙されたんじゃなくて夢を見せて貰ったんだ」
 「へーえ。でもみんな研みたいにサバケてたらいいけど、しつこい奴だっているよ」
 「お前とも結婚したがってまとわり付いて来る奴がいるのか」
 「偶にいるよ、そういうの」
 「そういうのがいたら俺が始末してやるから俺に言え」
 「え? 殺しちゃうの?」
 「馬鹿。誰が殺すと言った」
 「どうやって始末するの?」
 「優しく穏やかに話して聞かせるだけだ」
 「そんなんで納得するような奴はいないよ」
 「だからそれは俺に任せておけばいいんだ」
 「そういうの得意なの?」
 「ああ。その気のない相手を説得するのが俺の商売みたいなもんだからな」
 「そうなの? ソーカイヤってヤクザなんでしょ?」
 「誰に聞いた?」
 「久美ちゃん」
 「ご免なさい。妙ちゃんに説明するのに手っ取り早くヤクザだと言ってしまったんです。詳しく説明すると妙ちゃんは余計分からなくなるから」
 「まあいい。ヤクザの一種には違いないからな」
 「ねえ、普通のヤクザとどう違うの? ヤクザは嫌いだって言う人がヤクザだって言われると何かおかしいなって思うんだけど」
 「普通のヤクザは頭が空っぽで暴力をふるうのが商売だ。暴力団と言うくらいだからな」
 「研は?」
 「頭がいいという程でもないが馬鹿ではない。それに暴力は嫌いだ。だから俺は暴力団ではなくて総会屋だ」


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