妙子2-37
「痩せても恥ずかしいよ、そんなに小さいの。それに人に見られちゃうじゃない」
「水着はいいんだ、見られても」
「でも恥ずかしい」
「水着だから恥ずかしいということはない」
「だって此処の形がいいなんて言われちゃったから、意識するようになっちゃったのよ」
「いいじゃないか。形が悪いと言ってるんじゃない」
「それでも恥ずかしいな」
「恥ずかしかったらゴテゴテに化粧すればいいんだ」
「どうして?」
「そうすればマスク被ってるのと同じで人に見られても平気だ。恥ずかしくも何ともない」
「そう?」
「ああ」
「経験あるの?」
「俺が化粧した経験なんかある筈ないだろ」
「違うよ。マスク被った経験」
「それもないな」
「そしたら恥ずかしくも何ともないって何で分かるの?」
「ん? そういうのは常識だ」
「常識なの? 私知らなかった」
「お前の知らないことなんていくらでもある」
「そうだけど」
「ねえ、研、起きてよ」
「うむ」
「ねーえ」
「うむむむ」
「今日遊園地に行く約束だったのに、昨日あんなに飲んだりして」
「だからちゃんと朝までに帰ってきたじゃないか」
「あー、臭い。そんなにお酒臭い息してて大丈夫かな」
「大丈夫だ。たかが遊びに行くのに酔っていようが、病気だろうが、どうってことはない」
「それじゃタクシーで行くから、タクシーの中で寝てればいいわ」
「ああ」
「この服でいい?」
「ああ」
「見てないじゃない。折角研の為に昨日買ってきたんだから見てよ」
「ああ。それでいい」
「全然見てない。ま、いいや。とにかく行こう」
「うむ」
「ねえ」
「うむ」
「そうか。寝てていいわ。着いたら起こして上げるから」
「うむ」
「ねえ、起きて。着いたから」
「うむ。もう着いたのか」
「ほら、降りるよ」
「あっ」
「どうしたの?」
「財布を忘れた」
「此処にあるよ。もう払ったよ」
「抜き取ったのか?」
「そうじゃないよ。寝てる時に落ちたから拾ったの」
「そうか。今日は注意力散漫になってるからお前持っていてくれ」
「うん」
「それが子供みたいな服装なのか?」
「これはレースクイーン用かしら。それともコスプレ用なのかな」
「子供みたいな服を着ると言ってたんじゃなかったのか?」
「下着の見えそうなミニがいいと言ったじゃない」
「だから、子供の着るような短い服にするのかと思ったんだ」
「それのが良かった? 研が気に入ってくれそうなの一生懸命探したんだけど」
「いや、それでいい」
「これより短い方が良かった?」
「それより短いと普通に立ってても見えてしまうだろう」
「うん。これで気に入ってくれた?」
「実に気に入った」