妙子2-24
「お前以外の女は興味無いって言ったのはいつなのよ。つい昨日のことじゃないの」
「そうだったな。許してくれ」
「許せないよ。適当なことばっか言って喜ばせんじゃないよ」
「適当なことじゃない」
「もう、あんたなんか殺してやる」
「おい。何すんだ」
「殺してやるのよ。あんたを殺して私も死ぬんだから」
「危ねえな。包丁なんか振りまわして怪我するぞ」
「怪我なんかで済まさないわ。殺すんだって言ってるじゃないの」
「お前が怪我するって言ってるんだ」
「死ねぇー」
「あのなあ。喧嘩も俺の商売なんだ。プロに向かって包丁くらいで何が出来ると思ってるんだ」
「ううー。悔しい」
「少し落ち着け」
「殺せ。殺せー」
「何を1人で興奮してるんだ。俺の話を聞け」
「お前の話なんか聞きたくもないよー」
「これはまともに話が出来る状態ではないな」
「畜生。何してんのよ。セックスなんかしたって誤魔化されないわ」
「セックスするんじゃない」
「それじゃ何で裸にしてんのよ」
「追いかけてくると面倒だから外に出られないように服を脱がしただけだ。俺は女に追いかけられて往生したことがある」
「しょってんじゃないよ。誰があんたを追いかけるもんか、馬鹿。お前みたいな垂れ目のちょび髭なんてもう2度と見たくない」
「まあ暫く時間を置いて落ち着いた頃に又会おう」
「死ぬまで会うもんか」
「妙子、久しぶりだな」
「何なの、一体。何しに来たのよ」
「妙子に会いたくて、もう我慢出来なくなった」
「久美ちゃんとはどうなったのよ」
「どうなったとは?」
「フラレたんでしょ」
「口説いてもいないのにフラレることもない」
「嘘よ。フラレたんだわ。今あんたが入ってきた時の久美ちゃんの顔を見たもん」
「ほう。どんな顔してた?」
「あの久美ちゃんが、入ってきたあんたに気付いて氷のように冷たい顔に変わったわ。誰がきてもニコニコ愛敬振りまく久美ちゃんがよ」
「それは知らなかった。お前に似合わず目ざといな」
「たまたま見ただけよ。久美ちゃんがあんな顔するなんて誰だろうと思ったらあんただったのよ」
「それならもうお前が腹を立てる理由も無いことになるじゃないか」
「過ぎたことだからいいという訳には行かないわ」
「それなら言うが、お前秘密は守れるか?」
「何よ」
「仕事で久美の所に行ったというのは本当だ。史郎に頼まれた話があったからだ」
「どんな?」
「それは史郎と久美とのことだから、どうでもいい。とにかくそういう訳で久美と話すことになったんだが、その時に俺は久美に口説かれた」
「え?」
「いや。付き合って欲しいと言われただけだ」
「口説いてんじゃない」
「そうなるな。それを俺は断った」
「本当?」
「本当だ。だから氷のように冷たい顔をしたんだろう。プライドの強い女だからな」
「それ本当?」
「本当だ。だけど絶対誰にも喋るなよ」
「久美ちゃんとは本当に何も無かったの?」
「何かあったら彼女の電話を借りてお前に掛けたりするか」
「だって研は番号が表示されることを知らなかったじゃない」
「それは知らなかったけど、声を出すとか何かされる恐れはある。俺は女の家から仕事の電話をした時にいきなりチンポを咥えられたことがあるんだ」
「久美ちゃんのこと?」
「そうじゃない。昔の話だ。久美とは何も無かったと言っただろ」
「うーん」