あるお客の話-2
私の上でゆっくり腰をくねらせながら、レコーダーを早送りした。
「最初の120分は男の子が責められてるだけだから、聞きたかったら後から聞いてもいいけど………。あ、この辺りからだ。よく聞いててね」
妻は私を見下ろすと、ニヤニヤと笑った。
『えーっと…じゃあ、私は横になった方がいい?』
『そうですね、杏奈様がしてくださってた通りの方がイメージしやすいので』
『なるほどね、うん、いいよ』
『ありがとうございます、それじゃあ今から…』
少しの間沈黙が流れた。
『…うん、いいね。いきなり乳首じゃなくて、回りからね。指先と舌で、まずはフェザータッチを心がけて。胸の膨らみとか脇の方とか…うん、いいじゃん』
『あ、本当ですか?』
『前よりはってことよ?』
『あ、はい、そうですよね。こういう感じで…』
『んっ…うん、そうそう…まだ擽ったさが勝つけど、これが性感につながっていくから。あっぅんっ…胸の辺りを集中して今みたいに急に首筋とか鎖骨に戻るのもアリだよ。焦らされてる感じが増すから。なかなか勉強してるね』
『ありがとうございます!あとこういう感じですよね?手を開いて指先を胸の…山の麓の方って言うんですか?に当てて少しずつフェザータッチを心がけながら山頂の方にじわじわと…頂上の乳首には触れずにまた麓から山頂に向けてゆっくり…これ、焦らす感じになりませんか?』
『…………』
『杏奈様?』
『え?うん…考えてたのよ、コメント…んぅっまぁ…焦らす発想としては及第点ね』
『なるなど、ありがとうございます。そろそろ乳首に触れてもいいですか?それともまだ焦らした方が…』
『そこはその人の好みによって違うけど…ハジメ君が…いいと思うことをしてみたら?』
『分かりました、じゃあもう少しだけ焦らしをさせて頂きます』
妻が感じていたのがわかる。音声を聞きながら妻の腰のスライドが少しずつ早くなってきた。
『杏奈様、乳首が硬く尖って来ました』
『いちいち言わなくていいの!』
『あ、申し訳ございません。言葉責めも羞恥心を煽るきっかけになるかと思いまして』
『………乱暴に言ってごめんなさい。ハジメ君なりに研究したんだものね。うん…羞恥心を煽るのは上手な責め方よ』
妻に余裕がない。S嬢である妻が練習という口実のもと、弄ばれていたのだ。
『では、甘噛みをさせて頂きます………あっ!申し訳ございません、痛かったですか?』
『…大丈夫よ』
『でも今、ビクッてなったから痛くしてしまったかと』
『大丈夫だから続けなさい、時間なくなるよ…んくっ』
ちゅ………ちゅ…………ちゅ………
ハジメという青年が唇で妻の乳首を責める音が聞こえる。
『次、いきますね。親指と中指の腹で乳首の根元をつまんで、人差し指で乳首の頭を撫でるようにさせて頂きます』
『っくぅ……これ…男でも乳首調教して…んん……乳首が肥大した人にこうやって愛撫したりするの…よく知ってた…ぅ…ね』
『力加減はいかがでしょうか?』
『ふんっ…んんっ…悪くないよ……』
私は妻を見上げた。妻は動きながら目を反らした。罪悪感だ。これまで言葉で私を弄りつつも守って来た貞操。私以外の男に感じさせられたことに、無意識のうちに罪悪感を持っているようだった。
『次は…手の甲の方を相手に向ける感じで…乳首を人差し指と中指で挟みます。』
『乳輪に爪を当てるってことね?』
『はい、そうです。そして今度は、親指の腹で乳首の先を、円を描くように…』
『んんんんっ…はぁっ…いっぱい勉強……んんっ』
『はい、杏奈様に勉強させて頂きました。』
『上手よハジメ君…んんっ!これなら誰でも…んああっ!今の上手…乳首に集中させておいて脇を舌で…今度はねっとり厭らしく舐め上げる感じ…ああっ!変態!あ…』
妻が私にしがみつき、腰を激しく振りだした。こんな音声を聞かされて激しくされたら…私も妻の腰を掴んで下から突き上げた。
「あ…ぁ…あ…あ…ん……ん…ん…ん…ん…ん…いく…いきそう……」
確実にハジメ君に乳首を責められている時の方が感じている。私はそれにも嫉妬しながら暴発した。
ピピ…ピピ…ピピ…ピピ…
『時間が来てしまいました、杏奈様…今日は本当に、御教授ありがとうございました』
『はぁぁ…すごく上達してたね。あ、ごめんね、太もも、爪立てちゃった』
『いえいえ、大丈夫です。杏奈様が喜んで下さって、誉めて下さったんですから』
『…女社長も喜ぶと思うよ』
『はい、ありがとうございました』
レコーダーを停止させ、妻は立ち上がった。
「怒ってないから…」
私はそれを言うのが精一杯だった。