闇-1
そこは完全なる漆黒の闇だった。
ぎいと扉のきしむ音がし、一条の光が差し込んで女は顔をしかめた。
「お待たせしたね。これから君の拷問をはじめるよ」
もったいぶった口調の、背の低い男を筆頭に、ぞろぞろと五、六人の男が室内に入ってきた。
手にしたランタンの光を四方に備え付けてあった松明に灯すと、部屋から漆黒は駆逐され、石で造られた広く天井の高い部屋がくっきりと映し出される。
石畳の中央に鉄製の十字架が設置され、そこに女が鎖で繋がれていた。
ビキニの形をした鉄製の鎧を着込み、白い肌を惜しげもなく晒している。
縛られた女は、女性の標準からすると大きい。そして筋肉質で、腹筋はくっきりと割れている。
松明の灯で、長い黄金の髪と、深い海のような碧眼がきらめく。美しい顔立ちだ。
「よく眠れたかな、アリサちゃん!」
ねっとりとした口調で、背の低い男がささやくと同時に、露出した腹筋へ打撃を加える。
「うむっ!」
女は六つに分かれた腹筋で、その打撃を受け止める。
「相変わらず頑丈な腹筋だねアリサちゃん。今日はそのご自慢の腹筋を、粉々に破壊しに着たんだ。死にたくなければ、お仲間の居場所を話してくれないかな?」
「仲間を売る気はない」
きっぱりと言い放った。
その男はヒュウと口笛を吹いた。
「後で命乞いしても、もう遅いよ」
女は返答の代わりに、男の顔につばを吐きかけた。
「このアマァ!」
男は怒り狂い、アリサの腹へパンチの連打を浴びせる。
一発、二発、三発、四連発。
「……ど、どうした、全然効かないぞ…」
女の腹筋は赤くなっているものの、打撃が奥まで浸透した感じはなかった。
まるで硬質のゴムを殴っているように、女の鍛えた腹筋ですべて受け止められていた。
「……マーカズさま。程ほどで」
背後に控えた男の声で、マーカズという背の低い男は粗い息でうなづく。
「まあよい。わたしが自ら手を下さなくても、今日は強力な助っ人がいるからな。わたしは椅子に座り、ワインでも飲みながら、アリサちゃんの様子をじっくり見物するよ」