第5章 20年越しのキモチ-1
メールで下ネタ攻撃した翌日の朝、顔を合わせずらかったあの頃のような気分を感じながら、俊輔は仕事を終え約束した卓球台のあるボーリング場へ向かった。約束の19時の10分前に着いた。まだ友美は来ていないようだ。保育園はお迎えが遅れる父兄も珍しくはないという話は聞いている。遅れても仕方がない事だと思ってはいるが、俊輔には友美が遅れないで来る確信があった。友美なら少しでも遅れそうな時は絶対に連絡してくるはずだからだ。そう言う事は中学の時からしっかりしていたからだ。連絡なしに遅れる事はない、もう来るかな?と思った瞬間、窓から友美が小走りでこちらに向かって来る姿が確認出来た。
俊輔はエンジンを止め車を降りた。
「ごめん、待った??」
約束の時間にまだなっていないのに謝る友美に心が和む。
「ううん?それにまだ5分前だし。てか…」
俊輔はそう言って友美を見つめた。何故なら保育園の時のラフな服ではなく、スカートにハイヒール、コートを着てお洒落なかっこうをしていたからだ。それに気づいた友美は少し照れながら答えた。
「だって久々に同級生の男子と外で会うんだもん、ジャージじゃ恥ずかしいじゃん♪」
自分を意識してくれたのかと思うと嬉しくもあり、また照れくさくも感じる。
「どう?可愛い??」
「出た、プリティー友美!」
「アハハ!プリティーと言うにはちょっと歳取りすぎたかなぁ。ビューティ友美かな、今は♪」
そう言っておどける友美に俊輔は思う。
(冗談になってないし…、マジでビューティーだからな…)
化粧も直して来たのだろう。目の前の友美は初恋の時の胸高鳴りを思い出させる程に美しかった。
本気で目を奪われている俊輔に気付いた友美は照れ隠しで戯けてみせた。
「ヤダァ、本気で惚れた??♪」
「ち、違うし!」
ムキになる俊輔に意地悪い笑みを浮かべる。
「もう。すぐムキになるんだからぁ。俊輔、全然変わってないね。」
「あ…、いやぁ…」
頭をかいて苦笑いする。昔良く友美に突っ込まれたものだ。俊輔は本当の事を言われるとすぐムキになる、と。友美には嘘はつけないな、俊輔は20年ぶりにそう思ったのであった。
「とりあえず入ろうか。」
「うん。」
中学時代の同級生以上でも以下でもない距離感を保ちながらボーリング場へ入り卓球コーナーの方へ歩いて行ったのであった。