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Time Capsule
【初恋 恋愛小説】

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第5章 20年越しのキモチ-4

少しの間が空いた後、2人同時に口を開いた。それはお互いが何故今日2人で卓球をしに来たのか、考えていた事は同じ事であった証拠でもあった。

「あの…」
「あのさ…」

そう言って目が合うと、お互いとっさに視線を外し合った。
「な、何ぁに?」
「し、俊輔から言っていいよ…」
「いや、友美から…」
それまでの雰囲気から一気に初対面同士のような感じになってしまった事がお互い可笑しかった。2人は吹き出して笑った。2人から笑みが消えた後、俊輔の方から口を開いた。

「俺さ、ずっと友美に謝らなきゃならないって思ってたんだ…。」
友美にはそれだけで何の事か理解出来た。
「わ、私も…。俊輔にずっと謝りたかった事がある…。」
ずっと躊躇っていた内容だが、その一言が出ればもう躊躇っていた事が不思議に思える程に早く話してスッキリしたい気持ちになった。
「友美は悪くないよ。俺がバレンタインの時に友美から貰ったプレゼントを岩波にあげちゃったから友美を傷つけたんだから。」

俊輔が後に気付いた、友美に無視された理由、それは、中学2年生のバレンタインの時にチョコレートと一緒に貰ったボールペンを何日か後に同じクラスの岩波琢磨にくれくれとしつこく言われてあげてしまったのだ。そのボールペンは当時俊輔が好きだったジャイアンツのロゴ入りのボールペンであった。そのボールペンを岩波が自慢げにみんなに見せびらかしていた時に友美がそれを見てしまい激怒し、以降俊輔を無視するようになった。それが理由だろうと気付いた俊輔は間違っていなかった。俊輔の為のプレゼントを簡単に他人に渡された事に友美は怒り、そして傷ついたのであった。

その言葉を聞いた友美は怒るどころかどこか恐縮したような仕草を見せる。
「い、いいのよ…。もう20年も昔の事だもん。それにその事を直接俊輔に言わないで私の友達に言っちゃって、その友達からも冷たく当たられる事になっちゃって…。本当ならその友達から冷たく当たられる所以はなかったのに。ごめんね?」
そう言って悲しそうな顔をする友美に俊輔は思わず抱きしめたくなってしまう。が、それは出来なかった。

「友美は悪くないよ。俺は友美の気持ちを踏みにじる行為をしてしまったんだ。誰だって怒るし当然の報いだよ。本当にごめん。あんなに一生懸命選んで買ってくれたのに…。」
「えっ…?」
ボールペンは1人で買いに行った。散々悩んで決めた事を知っている人はいないはずである。不思議そうな顔で俊輔を見つめる友美に笑みを浮かべながら言った。
「俺さ、友美があのボールペンを選んでる時、偶然そこにいたんだ、実は…。」
「え…」
友美は絶句した。まさかそんな姿を見られていたとは思ってもいなかったからだ。あの悩みに悩んでいた姿を見られていたと思うと急に恥ずかしくなってしまった友美であった。


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