どこならいいですか-1
「意外と大きいよね、彩乃ちゃんの胸。」
「なんですか、いきなり。」
彼女は笑っている。
「沙楽先輩の方が大きいじゃないですか。」
「あら、いつ見たの?」
「え、あの…、水着の時に。」
「あら、水着姿の私の体を盗み見てるの?エッチ。」
「み、見えるじゃないですか、普通にしてたら。」
外でお弁当を食べるのに丁度いい季節になった。気温はまだそんなに高くはないけれど、ポカポカとした日差しが制服越しに体を温めてくれる。この時期、中庭の庭園は人気のお弁当広場になるが、十分に広いので場所に困ることは無い。木陰に並んだベンチ、校舎の壁のでっぱりなど人気スポットはいろいろあるが、今日は芝生の上に並んで座っている。
「ホントはナマで見たい?ここ。」
胸を突き出した。
「え…な、何を…。」
「私は見たいけどな、彩乃ちゃんの胸。制服越しも水着越しも可愛いけど、素肌のその部分って、どんななんだろう。そこもやっぱり色白で、でも先端は…」
「先輩…。」
私は周囲を見回した。いくつものグループがお弁当を広げ、談笑している。こっちを見ている生徒はいない。
「ね、チョットだけ触らせてよ。」
耳元で囁いた。
「な…。」
「チョットだってば。」
もう一度周囲を見回し、指を伸ばした。
「ダメですってば。」
そう囁き返してきたが、身を引く気配はない。
チョイ。
「う…。」
横からつついた。
「思った通りだ。柔らかいのに弾力がすごい。」
「何するんですか、もう。仕返ししますよ?」
「いいよ。」
彩乃ちゃんの左ほほがピクリと動いた。
「さあ。」
彼女は周囲を見回し、私に指を伸ばしてきた。
「なんてねー。」
その指を掴んでやった。
「あー、ズルーい。」
むくれてる頬を突いてやった。プ、と唇から音がした。
「うそだよ。」
彩乃ちゃんの掌を自分の胸に重ねた。その手はじっとしたまま動かない。私が上下に動かしてあげると、少しだけ握る力が伝わってきた。
「なんだか…ほっとします、先輩のここに手を当てていると。」
「私もよ。あなたの手がここにあると、何故か落ち着く…。」
彩乃ちゃんは潤んだ瞳で私を見つめた。
私はゆっくりと彼女の手を下ろした。
「私たち、春に出会ったばっかりよね。」
「ええ、そんな気がしませんけど。」
「そう、ずっと昔からの仲良しで、お互いの事を何でも知ってるみたいな錯覚をするときがあるわ。」
「私もです。沙楽先輩になら私の全てを知られて何をされてもいい、って思えるんです。」
「ほう、全てを知られて?何をされてもいい?」
「せ、先輩、ちょっとコワイんですけど。」
苦笑いしている。
「彩乃ちゃんにならいいかな、私も。全てを見られ、されるままに身を委ねても。」
「…それ、ちょっと方向性が違いません?」
「方向は同じかもしれないよ?距離の違いだけで。」
「え…。」
彩乃ちゃんは俯いて芝を弄りだした。
「抱かれたくなったらいつでも来たまえ、彩乃くん。」
彼女は視線を上げた。
「いきなり極端なとこまで行っちゃうんですね。」
二人で見つめ合って笑った。
「ね、早速だけどさ。」
「はい?」
「スカートの中見せてよ。」
「何を言って…」
「ダメ?」
「ダメですよ。」
「どうして?」
「どうしてって…見られたらどうするんですか、周りの人たちに。」
みんなそれぞれのおしゃべりに夢中になっている。
「私に見られること自体はいいのね。」
あきらかな動揺の色を顔に浮かべ目を泳がせている。
「や、やめましょうよ、ヘンな感じになっちゃうじゃないですか。それにこんな所で…。」
「どんな所ならいいの?」
彩乃ちゃんはしっとり潤った瞳で私をみつめた。
「…先輩だったら、どこならいいですか。」