ギリギリのライン-2
「大切な所にキズがついたら大変だからね、今日は私がしてあげる。」
「ええ!?」
彩乃ちゃんは口に手を当てて凍り付いている
「白状するとね、私もしてもらったのよ、去年、志歩先輩に。」
「そ、そうなんですか。」
「毎年恒例、みたいなものよ。特別なことをするわけじゃないの。さ、気を楽にして。」
気を楽になんて出来るとは思えないけど。
「ベンチに仰向けに寝て。」
「あの…。」
「寝て。」
「えっと…。」
「寝るの。」
「は、はい…。」
「寝なさい。」
「わ、分かりました。」
彩乃ちゃんは戸惑いながらも私に言われた通りにベンチの上に仰向けに寝た。
「まずは左ひざを抱え上げて。」
「…。」
訴えるような目で私を見上げている。
「そのままじゃムリでしょ。」
彩乃ちゃんは目をつむり、キュっと唇を結んで左ひざを抱え上げた。
「もっと高く。」
「はい。」
目の前に、競泳用水着のもっとも幅の狭い部分が見えている。元々タイトな裁断になっている上に今は濡れているので、中にある体の形がそのまま浮き出ている。
お腹から続く小さな丘を下っていくと、足の付け根付近に浅いくぼみが現れ、それは徐々に深くなってお尻の谷間へと繋がっている。
「そうそうそのまま。」
私は狙いを定めるため、水着の淵のラインを指でなぞった。
「う…。」
彩乃ちゃんが身をよじった。
「動かないの。キズつけちゃったら私、一生責任とらなきゃいけなくなるじゃない。」
「責任、って…。」
「いくわよ。」
「あ、あ、はい、お願いします。」
もう一度水着のラインを指でなぞった。そして、太腿の根本あたりの白くて滑らかな素肌に掌を当て、水着の中に隠れた皮膚を引き出すようにスーっと撫でた。彩乃ちゃんは身を固くしたが、今度は動かなかった。
私は水着の淵に指を掛け、少し横に捲った。彩乃ちゃんのイメージよりもそこは深く茂っていた。
「うぅ…。」
また彼女が少し動いた。まあ、そうよね。恥ずかしくないわけないんだから。
「こら。今度動いたら全部捲るわよ。」
「え!」
「それとも見られたい?だったらいっぱい動いてね。」
「いえ、それは…。」
私はまず、はみ出しそうな範囲の毛を5ミリぐらいの長さを残してハサミで切り落としていった。そこに現れた素肌は、内側にいくほど色が濃くなっていた。
彩乃ちゃんはというと、さっきよりずいぶんリラックスした表情を浮かべている。美容室でカットしてもらう時、信用できる相手ならむしろリラックスできて気持ちいいけど、そういう感じになってくれてるのだろうか。
短くしたところを指先で撫でてみた。ザラっとした手触りが気持ちいい。手入れの範囲はこんなもんで大丈夫だろう。彼女は撫でられても逃げる様子はない。むしろ口元を緩め、気持ちよさそうだ。
「それじゃあ本番行くよ。知ってると思うけど、そこそこ痛いからね。」
「あ、はい。大丈夫で…つっ!」
「頑張れ、女の子。」
「は、はいぃ。」
彩乃ちゃんは少し涙目になったものの、最後まで耐えた。
「よし、左側完了。」
「ありがとうございます。」
そう言って彼女は自分から右ひざを抱え上げた。
右側を手入れする途中で、少しだけ必要以上に水着を横に捲った。丘を越えかけたところで彩乃ちゃんの左眉がピクっとしたが、特に何も言わなかった。
「はい、出来上がり。」
「ありがとうございます!先輩。」
ベンチに座り直し、覗きこんで確認している。
「うわあ、こんなにきれいに。」
「2回目にしては上出来でしょ?」
「に、2回目?」
「ちなみに1回目は志歩先輩。」
彩乃ちゃんは何かもの言いたげに口をモグモグさせている。
「何?1回しかしたことなかったくせに偉そうに、って思ってる?」
「い、いえ…。」
上目づかいに私を見ている。
「今思うとね。」
「はい。」
「練習させてくれたのかもね、志歩先輩。今日の日の為に。」
「練習…。」
「彩乃ちゃん。そのうち私にもしてくれない?」
彼女は目を真ん丸に開き、私の股間に一瞬だけ視線を飛ばし、目を泳がせた。
『沙楽ちゃん。いつか私にもしてくれないかしら。』
私が志歩先輩のそんな所に、今されたのと同じことをする…。そう考えると、なぜだか動悸が止まらなくなり、視線が定まらなくなってしまった。
「い、いいんですか?」
「いいっていうか、お願い。今日は必要ないけど、そのうちね。」
「はい…。」
私は俯いてモジモジしている彩乃ちゃんの隣に座り、髪を撫でてギュっと抱き寄せた。
「さ、行こ。あなたに教えたいことはまだまだたくさんあるから。」
「はい!よろしくお願いします、沙楽先輩。」