宴 〜契約〜-2
「あっ……あんなっ……とこで、止められる、からっ……!」
体が疼いてどうしようもなく、電話を切るまで我慢できなかったらしい。
「よしよし。ほら」
意地悪い気分になった胤真は智佳を組み敷き、秘裂の中で先端だけを抜き差しする。
「あああああっ……もっと、もっと奥までえっ!」
堪らずに、智佳は懇願した。
「おま〇こめちゃくちゃにしてえっ!!」
「こらこら。お願いするからには、それなりの言葉遣いってモノがあるだろ?」
「あ、ああ申し訳ありません!智佳のはしたないおま〇こを、胤真様の太いおち〇ち〇でめちゃくちゃにして下さいいっ!!」
ためらいもなくこんな言葉が飛び出してくる唇を胤真は塞ぎ、智佳の望みを叶えてやる。
ぐぼおっ!!
「っぶうんむうぶむっ!!」
がくがくと、智佳の体が痙攣した。
「さて、今日は忙しいぞ」
智佳がイクと粘液の絡み付いた肉棒を智佳の中から抜き去りながら、胤真は言う。
「今から風呂入ってメシ食ってで、ぎりぎり二時間だからな」
「何が……あるの?」
襲い掛かって来た胤真がまだイッていないのに行為が終わってしまい、智佳は不審さに眉をひそめた。
「爺さんが、お前に会いたがってる」
胤真の祖父である草薙徳之進は、全く老いというものを感じさせない男だった。
一瞬見ただけならば枯木にも似たその体はしかし、溢れんばかりのエネルギーを拡散していた。
目がよほどの節穴でなければ、只者だとは思わないだろう。
「おお来たか。まあ、楽にしなさい」
そう声をかけられた智佳は、きちんと正座していた膝を遠慮なく崩した。
「それで、あの……本日の急な呼び出しは、どのような用件なのでしょうか?」
徳之進が、ニヤリと笑う。
「詳しく話す前に、まずは礼を言わねばならんの。胤真の性欲を発散させてくれている事、感謝しておるぞ」
智佳はぎょっとしたが、何とか表情を押し殺した。
「胤真さんには、再従兄弟として親しくしていただいていますが……それが、何か?」
とりあえず惚けてみせた智佳に対し、徳之進がにんまりと笑う。
「何しろ六年ぶりに肉体へ触れる事が許されたのじゃから、当人も歯止めが利かなくて困っておるじゃろうが」
「な……何でそれをッ!?」
狼狽した声を出してから……智佳は、慌てて口を押さえた。
自分と胤真の関係は使用人達の間では言わば公然の秘密扱いで、多少恥ずかしくはあるが今更取り立てて騒ぐほどではない。
だが何故、徳之進が六年前の事を知っているのか?
「奇妙か微妙かはさておき、お前さん達二人の関係はどうも興味をそそられてのう……人を使って、色々と調べさせた」
「……それで?」
「一旦仲良くなっておきながら、四年前から仲が悪くなっとるな。あのキャンプに参加した人間や公園のパーティーに参加しておる人間から、色々と聞かせてもらった」
「……」
徳之進が手招きしたので、智佳は傍へ寄る。
「!」
「……女として、つらい目に遭ったな」
智佳は、徳之進から抱きしめられていた。
「……胤真が……傍にいてくれましたから……昔も、今も」
この人には何もかも見透かされていると思うと、慌てて取り繕うのは馬鹿らしい。
「それで、あの……本日は、どのような用件で呼び出しを?」
居心地の悪さに多少身をよじりながら、智佳は尋ねた。
まさか抱きしめて優しい言葉をかける事が、わざわざ自分を呼び出した理由ではあるまい。
「おお、そうじゃったな。今日わざわざ呼び立てたのは、少しばかり教えておいた方がいい事があると考えたんじゃが……ここより、蔵書室の方がよかろ」
二人は蔵書室―中でも草薙家の恥部が納められているとされる一室へと移動した。
草薙本家の後継ぎとして全てを掌握する必要がある胤真は別だが、未成年の智佳は入る事はおろか見る事すら許されなかった部屋なのに。
部屋の壁には白いスクリーンがかけられ、使用人が映写機にフィルムをセットしていた。
部屋には椅子が二脚用意されており、それぞれに智佳と徳之進が座る。
「今から見せる物はずいぶん古い代物じゃから、画質は悪いし音声もない。じゃが、草薙に生まれた男がどんな者かは知る事ができるじゃろ」
徳之進が片手を上げると部屋の照明が落ち、映写機が回り始めた。
清楚な雰囲気の美人が、スクリーンに映し出される。
女性はややうつむき加減の憂いを帯びた表情で、着ている物を脱ぎ始めた。
「これはわしの妻、馨じゃ」
徳之進が、解説してくれる。
「そして……」
画面が右へ動き、上半身を荒縄で拘束された青年を映し出した。
「これが小松崎清四郎。妻の実家におった男じゃ」
何でそんな人がこんな場所で縛られているのだろう。