別荘での戦い-4
「きゃっ!」
「………。」
彼女を壁に軽く叩きつけ、じっと彼女を睨みつける。
「な、なによ。」
「それはこっちの台詞だ、…何してんの?」
「それは……。」
いくら彼女でも俺の言いたい事を察したようで。
「ゴメン…、でもあのままじゃ折角のバーベキューだって。」
「だからってなーんでアイツ何かと!俺と話せよ!」
「それは、その通りだけど。」
「……。」
「………。」
更にずっしりと重たい空気に、自然も動物も泣いてるか。
「………あるんだろ?」
「え…。」
「まだあるんだろ!?アイツへの未練が。」
「ないよ!そんなの!あーんな人の気持ちも分からん馬鹿たれ、別れて正解だし。」
「だったらぁ!…もうやめろよ、俺の前で別の男と普通に楽しそうな顔すんの。」
「隼人…。」
ほんと、どうしてこんな事に、いやその前に。
俺はハッと我に返り彼女から一歩離れ。
「ゴメン、怖がらせて…。」
「……。」
「俺…バカだよなぁー、お前は断れきれなくてしかたがなく連れて来ただけで、ホント恋人でも何でもないのに、勝手にヤキモチ焼いてこんな怒って。」
「ううん!謝るのは私の方よ、隼人が別荘を折角誘ってくれてオーケーの返事をしたらすっごく喜んでくれたのに、こんな…ありえないよね二人っきりのデートなのにあんな元カレを連れてくなんてほんと非常識、逆だったら暴れるよ私。」
「巴…。」
「隼人、私なんかをここまで好きでいてくれるのに中途半端な気持ちで傷つけて本当に御免なさい。」
「……まぁ連れてきちゃったものはしょうがないよな。」
「私今からアイツ追い払うね!まぁ一応元カレだし、丁重にお願いするけど。」
「いいよいいよ!今更帰るにしてもどうやって?次のバスまでまだ相当時間あるし。」
「でも…。」
「こーなったら三人で仲良くやろうや、ここまで来てぎくしゃくしたってしゃーないしアイツ…一条君だっけ?彼ともある程度良い関係を持とうと思う、その方がお互いにとって良いし、さっきまであんなだったからちょっと難しいけど、努力する、お前もその方がいいだろ?」
「……隼人。」
そうと決まれば早速気持ちも裏返し、彼の居るバーベキューへ戻る事に。
「聞くと同じ弓道部なんだって?なら打ち解けるのは容易だろう、俺はともかく彼がどう出るか、まぁまだ俺に対して敵対心はあるのだろうけど…、しばらくしたらお互いに弓矢を打ち合ってたりしてな。」
「…二人が、仲良し……、はぁー良いな。あの子若葉が嘗てあたると小鳥遊君がお互い分かち合ってそれを見てとても嬉しそうな、その気持ちを私も味わえるなんて。」
曇って見えた青空がとても晴れ晴れと見えて来た。
「おーい君!食べ終わったら一緒にテニスでもしないか!?この近くにテニスコートもあるんだ、ラケットだって一応二人分…。」
「…蓮?」
さっきまでいた筈の彼が、忽然と姿を消した。
一条、君…。