別荘での戦い-10
翌日…、あれから私はあの別荘から走ってかなり距離を置き、疲れきったところで呼吸を整え、若葉に電話した。
「私、もうっ!」
「…とにかく落ち着いて、まず帰りはどうするの?」
「あ…。」
彼女も私があのまま二人のいる別荘に戻る筈がないと悟ったそうで。
勢いよく飛び出し、後の事はまるで考えてなかったけれど、バスも当然そう都合よく来る訳でもないし、すると若葉が落ち着いた口調でタクシーを呼ぶ事を提案してくれて。
夕暮れの公園、ベンチに腰掛ける私と若葉。
やっぱ持つべきものは友人よね。
「……そっかぁー、そんな事が。」
「こんな、こんな筈じゃなかったのに。」
楽しい彼……、とのデートが、一体どうして?…ううんどうもこうも悪いのは私よ。
あの時ちゃんと断って、ううんきちっと振り切っていれば。
「振り切った所で本当にそれで幸せだった?」
「え?」
「例え一条君との誘いを断れたとしても巴ちゃんの事だし、きっと心の片隅で考えそして悩むんだろうね、幾ら必死に努力しようとした所で。」
「じゃーどうしたら良かったのよ!」
「こういう事に良いとか悪いとかは。」
「……私のせいなのは間違いないわ、私が、幾ら向こうからあんな電話をしてきたからって、私が変に中途半端なせいで!」
「巴、ちゃん…。」
私の大好きだった普段はおちゃらけてるけど包容力溢れそうな居て落ち着く蓮。
そんな彼と別れ、慣れない仕事で苦しんで、そんな中の私を救ってくれた隼人。
「うっ、ううっ!」
あの後二人がどうなったかは知らない、少なくとも連絡はきてないし、学校でも蓮は登校してはいたけど、……小鳥遊君がずっと傍にいてくれて、でなかったら来てなかったかもしれない。
私は、私は…。
傷つけてしまった、困らせた、間違えた!
こんな、こんな私を好きでいてくれる人を、あんな風に。
「ううっ!うっうう……。」
「巴、ちゃん…。」
「ねぇ、若葉…。」
「?」
「私、一体どうすればいい?」
「……。」
「これからどうしていけばいいのよっ!!」
もう、二人に合わす顔何て、どこにもない。
「うっううううううっ!うわぁぁぁぁぁんっ!!」
絶望に満ち溢れ泣き出す私に言葉を掛ける事が出来ず、ただただ私を抱きしめる若葉。
次回、75話に続く。