第3章 大人になって-4
友美と再会し、時間が経つにつれ薄れて行った当時の事を少しずつ鮮明に思い出して来る俊輔。今取り敢えず普通に話せてはいるが、当時は顔を合わせるのは勿論、姿を見ると思わず避けてしまったぐらい悩んでいた事を思い出した。
「そっか…、あの時はアレ以外に何か友美に悪い事をしてしまったんじゃないかと色々考えてたんだよな…。」
もしかして思い当たる節以外に何か原因があったのではないかと悩んでいた。それに友美に無視されるようになってから友美の友達にも無視されたし、自分を見る目がどこか自分を非難しているような厳しいものに感じた。当時は友美に無視される事と、友美の友達に非難含みの視線を浴びせられる事は別の問題だと思っていた。友美に無視された原因に気付いたのは高校に入ってからだ。その時に初めてその2つが関連していた事に気付いたのはもはや後の祭りであった。友美とは別の高校に進んだし、無視されて以来、居づらい思いをずっと感じながら中学生活を送っていた為、別の高校に進み友美や友美の友達とこれから会わなくて済むと思った時は気が楽になった事を覚えている。以降、時間が経つにつれ友美との事は少しずつ過去の記憶になって行った。
どうして無視されるんだ、どうして冷たい視線を受けなきゃならないんだ…、俊輔はその事に苛立たしさを感じた時もあった。しかし今考えればそれは当然の報いであった。無視された原因が自分の思っている事ではなくてもそれだけの報いを受ける事は仕方のない事に思える。自分が腹を立てるのは完全なるお門違いであると今なら言えるのであった。
そんな自分に、いくら20年経ったと言え許してくれたかどうかは分からないが取り敢えず普通に話してくれる友美は昔と変わらずやっぱり優しい人間なんだと思う。そんな友美にあの時の事を封印し知らん振りをする事は嫌だった。タイミングを見てその事について話がしたい、そう思っていた。
保育園の送りは俊輔、迎えは亜里沙が行く事が基本であったが、亜里沙の仕事が終わらない時には俊輔が迎えに行く日もあった。それは別に構わない。自分が出張であったり早く仕事に行かなければならない時には亜里沙が送りに行く日もあるからだ。全てに置いてそうだが、亜里沙とはお互いバランスを取りながら上手くやれている。どちらかに任せっきりにならない所が夫婦生活が円満になっている理由かも知れない。それに迎えに行くと朝とは違い慌ただしさがなくゆっくりと出来る事に気付いた。それに同じくお迎えに来る他の園児のママとも交流出来る密かな楽しみもある。ママさん達はみんな若いし、何と言うか健全なキャバクラのように感じる。若いママさん達と喋るのもなかなか楽しかった。
「俺にもとうとうママ友が出来る日がきたのか…♪」
保育園のお迎えがむしろ楽しみになったりしたのであった。