第3章 大人になって-3
毎朝のように会話する事により、少しずつ会話からぎこちなさは消えて行った。だが俊輔は分かっている。それが中学の頃のように周りから付き合っているのかと勘違いされる程のものなのではない事を。今の友美との仲良し度合いは、2人が初対面であったとしてもこれぐらいは仲良くなれるだろう。俊輔にとっては無視されたこと、友美にとっては無視してしまった事、お互いが同じ事で微妙に壁を作りあっている事は俊輔も友美も分かっていた。しかしそれに触れぬよう2人とも気を使っている事もお互いが気づいているところなのであった。
無邪気に話せた中学時代が懐かしいし羨ましい。大人になった今、本音を隠しながらお互いを気遣った言葉を選び話さなければならない機会が多い。それが子供の頃から様々な経験を積んで人間的に成長して来た証でもあるのだが、無邪気に本音を口に出来たあの頃がやはり羨ましく感じたりする。
だがやはり会話が自然に出来るようになると、当初感じた気の重さは感じなくなった。足取り軽く保育園に行けるようになった。会話を重ねるにつれて自分の知らない友美の20年間に少しでも触れられると嬉しさも感じた。
「彩音、昨日の夜から少し咳が出るんだよね。」
「本当??風邪かな…。今流行ってるからね。じゃあ今日は室内でいいかな?」
「うん。よろしくね。」
「了解です♪」
中学の同級生とこう言う会話をするのも何か不思議な感じがする。彩音を抱っこする友美は、もし子供が産まれたならいいママになるだろうた、そう思った。仕事に行こうと部屋を出る時に彩音の手を取りバイバイする友美の姿にどこかワクワクする浮いた気持ちになる。亜里沙には後ろめたいが、まるで友美が妻になったような気分になってしまう。車を運転しながらついつい友美の事を考えてしまう。
「友美ってどんなセックスすんのかなー。昔から積極的だったからきっと…♪中里と子作りの真っ只中なんだろうなぁ。友美が中出しされてんのかー。エロいな。」
ついついいやらしい妄想をしてしまう。そんな自分に俊輔は思う。昔は異性と意識した事がなかったが、もし異性として意識していたら付き合っていたのかどうかを。きっと付き合っていただろう。そして恭子に求めたように、友美の体を頻繁に求めていただろう。友美なら一緒にいやらしい事を楽しんでくれそうな気がした。
「友美とあの頃付き合ってたら、ずっと付き合って今頃結婚してたのかなぁ…」
そんな事を考えながら一日仕事をしていた俊輔であった。