第1章 あの日の後悔-4
俊輔と友美は別に付き合っていた訳ではない。中学からの同級生だ。1年生の時にはクラスも違かったし殆ど会話すらする機会はなかったが、2年生で同じクラスになり、2学期時の席替え時に隣同士になってから急に仲良くなったのであった。授業中も下らない事で話に夢中になり先生から叱られたり、休み時間中も良く2人で話に夢中になったりしていた。何と言うのだろう、フィーリングが合ったのであった。
「俊輔ってさー、村田と付き合ってんの??」
ある時親友にそう聞かれた。
「付き合ってないよ?何で?」
「だっていつもイチャイチャしてるからさぁ。」
「イチャイチャしてないよ。」
「してんじゃん。」
そんか会話をした時に初めて、自分ではただ仲良く喋って楽しんでいるだけのつもりでも、周りから見れば付き合っているのかと勘違いされるほどイチャイチャしてるように見られている事に気付いた。だが恋愛感情は一切なかったのが正直な気持ちであった。友美だってそうだろう。お互い男女を超えた友情から成り立っている関係だと感じているはずだ。俊輔は周りの目など気にせずにそれまでと変わらず友美とは良い友達関係を続けていた。
俊輔が好きだったのは1年の時に同じクラスであった今泉恭子と言う女の子であった。取り分け美人という訳ではなかったが、とにかく好きだったし、男友達にはそれを公言していたし、きっと遠回りに本人にもそれは伝わっていたかも知れない。ただ友美と仲良く喋るようにはいかなかった。照れ臭くて会話すらできずにいた。最終的には3年生の俊輔の誕生日まで全く進展なく進む事になる。とにかく俊輔の頭の中には今泉恭子しかなく、友美は恋愛対象にはならなかった。
ずっと友美とは仲良かったが、何故か2年の時のバレンタインから数日経った頃ぐらいから無視されるようになってしまった。その時理由は全く分からなかった。それまでの親密な関係が嘘のように避けられてしまい、周りからは破局だとからかわれたりした。付き合ってもいないのに破局とかねーし、そう思いながらもそれ以降、20年経ち保育園で再会するまで一言も会話をする事は愚か、顔を合わせる事もなかったのであった。
俊輔はある日、どうして自分が無視され始めたのかに気付いた。本人に聞いた訳ではないが、きっとそうに違いない、そう確信が持てたと同時に、何故友美に対して配慮に欠けた行動をとってしまったのだろうと後悔していたのであった。いつか真実を伝え誤解を解きたい…、ずっとそう思いながら10年、15年過ぎ、次第にそんな事も忘れがちになってきた頃の再会に俊輔は、今更そんな釈明は必要なのだろかと迷っていた。下手に蒸し返さないでいた方が、何となく普通に会話が出来そうな気がしてならなかった。しかしついつい仕事中も友美の事を考えてしまう。
「今思えば…、好きだったのかな…。」
青春の淡い気持ちを振り返れば、なんとなくそう思えてしまう俊輔であった。