日常と非日常の境界-1
あたしの名前は、智子。
もうすぐ卒業を控えた高校三年生です。
進路が決まったあたしと、友達の加奈子は卒業する前に何か思い出に残ることをしようと考えていました。
彼女と出会って三年目の冬。
この話は、彼女が冬の夜空を見に行こうとあたしを誘ってくれたことから始まります。
「っえ?」
彼女の突然の提案にあたしは驚き、上ずった声で返してしまった。
「だからぁ。一緒に星を見に行かなぃってこと。ほら。智子。卒業する前にどっか行きたいって言っていたじゃん。それに今なら何とか流星群が見られるかもしれないんだって」
あたしも佳菜子も特に天体に興味があるわけではない。
けれど、星を見るのは嫌いじゃなかったから、あたしたちは二人で出かけることを約束した。
冬の冷たい風が吹く丘であたしは、ただ先ゆく彼女を追うように付いていく。
あたしたちの街は何もなくてつまらないところだけど、今日ばかりはこの街の生まれでよかったと思う。
だって、こんなに星が近くに見ることができるからね。
数えきれないくらいの天に舞う星たちが、自己の力を誇示するがごとく光り輝いて見えた。
「すごい…」
漏れ出でるのは二人の感嘆。
あたしは彼女と並んで夜空を見上げたまま歩いていた。
幻想的とも言える星の下で、あたしたちは三年間の二人の思い出に耽っていた。
彼女と出会って早三年。
その出会いは彼女にとってもあたしにとっても、ごく在り来りな出会いだったんだろうなと思う。
文化祭の出し物も夜遅くなるまで一緒になったこと。
彼女を助けるために生徒会を手伝ったこと。
その一つ一つが彼女との思い出。