日常と非日常の境界-4
「(はぁ。佳菜子可愛いなぁ。って、言うか、入学した時は、背も胸も断然あたしが勝っていたのに)」
実のところ胸に関して言えば、当時からあたしのほうが負けていたが、女のプライドをかけて認めたくないから。
「智子。」
背後から回された腕に華奢なあたしの身体は包まれる。
「ひゃあぁ!? もう。思わず声をあげちゃったじゃない。」
あたしがあわてふためくのを楽しそうに佳菜子は見つめていた。
「ふふっ。智子が可愛いから」
佳菜子はそう耳元で囁く。
その声色には官能的な熱を帯びていて、あたしもくらってきちゃったよ。
「って。馬鹿。みんなに聞こえちゃうじゃない」
実のところ、あたしが気にしているほど周りは好奇の目で見てはいなくて、せいぜい仲いい女友達程度にしか思っていなかった。
それを知ってか知らずか、佳菜子はなかなかあたしを離してくれない。
「何?智子やっぱりあたしの事嫌いなんだ。この前言ったことは出任せなんだ」
そんなふうに言っていじけるもんだから余計に質が悪い。
まあ、そうやっていじける佳菜子も可愛いんだけどね。
確かにあの日、あたしが言ったことは事実だし、その気持ちにほんの偽りもなく、むしろあたしの中の佳菜子が日に日に大きくなっていた。
気が付けばあたしの目は佳菜子を追っていて、彼女に話し掛けられるとちょっと熱くなってしまう。
だけど、あたしはどうしても周りの目を気にしてしまい、佳菜子に素直に伝えることができずにいた。
「もぅ。佳菜子。いじけないでよぉ」
そう言いながら、佳菜子の隣に入れることが何よりうれしかった。