日常と非日常の境界-3
「そうだよね。いきなり好きなんて言われても困っちゃうよね。ごめんね。わかっていたんだ。変な事だって。でも、最後に伝えようと思っていたから。」
消えてしまいそうな佳菜子の声。
だけど、あたしは彼女に答えることができなくて。
そのまま、佳菜子は握った手を解こうとする。
失われる佳菜子の温もり。
あたしの手は冷たい冬の空を掴んでいた。
一瞬、二人は見詰め合って、沈黙が訪れる。
「あせらなくていいと思う。あたしは佳菜子から離れたりしないよ。これからもずっとね」
この幻想的な世界が手伝ってか、あたしは普段なら言えやしない恥ずかしい台詞をはく。
それでも今の佳菜子には十分だった。
「えっ?それって」
まだ分からないような素振りを見せている。
この気持ち、あたし自身分かっていないと思う。
「だからね。今はまだ佳菜子は友達でそんな関係にはなれないけれど、友達なのは変わりないし、きっとこれからもっと大切な人になるから」
「っう。っうう。智子」
佳菜子は目に涙を浮かべて上ずった声で啜り泣いていた。
「ちょっとぉ泣かないでよ。あたしが泣かしたみたいでしょ」
佳菜子はその愛らしい笑顔になってあたしを見つめた。
「うぅん?智子の所為だよ。だって、あたしすごく幸せになっちゃたんだから」
「っもう、馬鹿」
さて、そんな事があったので、あたしは残り少ない学校生活の中で、少なからずあたしも佳菜子の事を意識しだしていたの。