大晦日の夜に-4
「もうすぐ八時ね、そろそろ亮太くん降りてくるんじゃない? ねえ、ちょっと聞いてる?」
「聞いてる。いいよ、一緒に待っててくれなくたって、ひとりで大丈夫」
心配顔の葵を見ると、なぜだか意地を張って平気なふりをしたくなる。
美咲はズズッ、とわざと大きな音を立ててフラペチーノを啜り、もう片方の手をコートのポケットに突っ込んだ。
大好きなはずの甘いクリームも、今日は全然味がわからない。
葵は聡と顔を見合わせ、呆れたように笑った。
「あのね、いまにも泣きそうな顔して大丈夫とか嘘つかないの。そんなに不安?」
「無理もないよ、美咲ちゃんと亮太は遠距離恋愛だからね。会えないときに喧嘩すると、誰だってあれこれ考えて不安になるだろうし」
「不安じゃない、大丈夫だったら」
バレバレの嘘に、ふたりがまた笑う。
ああ、もう。
やだやだ。
だいたい悪いのは亮太なのに。
だけど、電話ではちょっと言い過ぎた。
不安じゃないなんて大嘘だ。
亮太の顔を見たら、何て言えばいいんだろう。
さっきから足がすくむほど、不安で怖くてどうしたらいいかわからない。