未知華14歳、おもらしが見つかって…-2
「わあ、この部屋すずしい!」
翌日も彼女は、定刻より少し早く僕の部屋にやってきた。僕は予め、冷房で部屋をキンキンに冷やしておいた。
「外は暑かったでしょ。ほら、ジュース飲んで」
「わー、ありがとうございます!」
僕がジョッキに注がれたジュースを手渡すと、よほど暑かったのだろう、彼女は美味しそうに喉をコクンコクンと動かして、それを飲み干した。
「さあ、それじゃあ勉強を始めるよ!」
まず彼女に取り組ませたのは、ごく易しい数学の問題。何も難しいことはない、一つ一つ順番に進めていけば、必ず答えに辿り着く。しかし、その一つ一つが彼女はとてつもなく遅い。僕は口出ししたくなるのを我慢して、じっと待っていると、
「せ、先生…」
「ん?」
「…トイレ行っていいですか?」
コレが狙いだったのだ。部屋を冷やして利尿剤入りのジュースを飲ませる。当然トイレに行きたくなるが、それを我慢させて問題を解かせれば、少しは解答が早くなるのではないか。
「この問題を解いてからにしよう」
「ええ〜!」
彼女は眉を八の字にゆがめ、眩しそうにこちらを見た。僕がニッコリと笑顔を返すと、唇を突き出して、また問題に向かい始めた。
しかし、依然として解答速度は甚だしく遅い。それどころか、ついに彼女の手は止まってしまった。見ると彼女は、ギュッと目を瞑り、口を真一文字に結んでいる。部屋は寒いくらいなのに、その額には汗が滲んでいた。身体を縮めるようにして強ばらせ、脚だけはモジモジとスカートの内側で擦り合わせている。
「どうしたの?」
僕はわざとらしく声を掛ける。彼女は困り眉の下の眼を細めて、僕をちらっと見たが、すぐに肩をすくめるようにして下を向いてしまった。
「あッ…!」
僕が言葉を掛けようと思った矢先、彼女の口から小さな声が漏れた。やがて、椅子の脚を伝ってチョロチョロと水が流れ落ち、床に水溜まりを作った。ジャンパースカートはその水の流れに沿って、色を変じている。彼女は一層身体を縮こまらせて、顔を真っ赤に染めながら、べそをかいている。
「うぅ、お、おもらしなんか…ずっと、してなかったのに!」
呆気にとられている僕のほうに向き直った彼女は、懇願するように言う。
「先生、ごめんなさい…。お、お母さんには言わないで…!」
目の周りが腫れぼったくなっている。叱られるのが怖いのだろう、涙はまだ止まらない。鼻からはスンスンと小さな音が聞こえる。
「大丈夫、誰にも言わないよ」
僕は優しく彼女の髪を撫でてやる。滑らかな感触が指をくすぐる。彼女は、眩しそうに細めていた目を開いて、僕を見上げた。
「ほ、本当!? ありがとう、先生!」
いつもの人なつっこい笑顔が彼女に戻った。その笑顔は僕にイジワル心を起こさせた。