灼熱の咆哮-2
「一人用だから幅は狭いけど。」
「う、うん。」
私はベッドにあがり、仰向けに横になった。
清志は足首に引っかかっていたズボンとトランクスを抜き取った。私たちは二人とも、彼のデザインしたTシャツ一枚の姿になった。
「さあ、来て…。」
彼がベッドに上がると、スプリングの軋み音がギ、と鳴った。
「諒子。」
体を重ねられた。閉じた瞼の上に影を感じた。
「んふぅ…。」
重なり、蠢く唇。けして上手とは言えないが、彼の真摯な気持ちが伝わってくる。こんなにも身をとろけさせる様な熱く甘く優しいキスは初めてだ。私、本当に愛されてるんだ、この人に。
彼の手が私のシャツの裾を掴んだ。
「ダーメ。これは脱がないわ。」
「そうか、そうだね。」
シャツの布一枚の上を清志のてのひらが這い上がってくる。それはやがて胸のふくらみに到達し、そのまま撫で上げられた。
「あふぅ…。」
先端を通過する時、ジンジンとした痺れが胸の奥深くまで響いた。
「あはぁ…。」
もう一度。
清志の唇が首筋を這い降りてくる。シャツの上から私の胸に顔を埋めてきた。そしてそのまま先端を唇で…。
「はあぁ…。」
悔しいが声が漏れてしまう。技術ではなく気持ちに感じて。こんなふうに…こんなふうに愛されたかったのかもしれない、私はずっと。
彼の唇が下降を再開した。お腹を這い、おへそを通過して…。
「ちょ、ちょっとぉ、何してるのよ。」
カサカサカサ。
「気持ちいいね、諒子のここ。」
頬ずりしている。
「くすぐったいってば。」
「そう?」
カサカサカサ。
「やめ、やめなさいってば、うはははっ!」
「じゃ、もう少し下に行ってもいい?」
それはつまり…。
「い、いいよ。したいのなら。」
「うん、したい。」
彼の唇が下がってくる、下がってくる、下がって…。
「はうぅ…。」
敏感な蕾を捉えられた。唇で吸われ、先端に舌を這わされている。乱暴にではない。とてもソフトに。なのに。
「あはぁあぁ…」
なのに、なぜこんなにも感じるのだろう。ジーンと下腹部の奥深くに沈み込んでくるような快感が私を痺れさせ、全身の力が抜けてしまう。
ふと視線を下げると、清志と目が合った。いつもの優しい瞳の中に、ギラギラとした炎が灯っている。
「清志、欲しいの?私のそこが。」
彼は口の動きを止めずに頷いた。
「いいのよ、入れても…。」
瞳の中の炎がひときわ明るく燃え上がった。
清志は口を離していったん膝立ちになり、私の両足を肩に抱え上げて覆いかぶさってきた。彼の魔獣が私に狙いを定め、グーンと近づいてきた。
「ちょい待ち!」
ガクン、と寸止めされた魔獣がブラリと揺れた。
「な、なに?」
彼は目が血走っている。鼻息もスゴイ。
「そこの小っちゃい棚、上から二段目の右奥。」
彼は動かない。
「ね、着けてよ、早く。そして来て、ここに。」
グイ。
「ちょ、なに押し付けてるのよ!ダメだってば。」
グイィー。
「入っちゃうってば。いや、なかなか入らないとは思うけどね、それ。当たったらどうするのよ?」
「育てる。」
「そ…あなたまだ学生じゃない。私、最低でも出産の前後数か月は働けないよ?その後も子育てでいつ仕事に復帰できるか分からない。収入なくなるんだよ?」
「大丈夫。」
「…就職決まってるの?」
「決まってないよ。」
はあ…。
「あのさ、言っちゃ悪いけど、美大出てもフツーの就職口はないと思うよ?私の友達で一人美大卒いたけど、ゲーム会社のデザイナーになって描きたくもない絵を延々と描かされて絵が嫌いになって、しまいには精神病んで実家に帰っちゃった。他のデザイン職も似たようなもんじゃないのかなあ。」
「だろうね。だから、やらない。」
「え、じゃ、私のヒモに…」
「まさか。ちゃんとお金は稼ぐさ。」
彼の瞳には自信が溢れている。
「どうやって、って訊いても?」
清志は大きくゆっくり頷いた。その動きに合わせて下の清志も頷いた。
「風原剣持(はやしばら けんじ)って、聞いたこと無い?」
「…知ってるよ?あまりにも個性が強すぎてメインストリームには乗ってないけど、彼にしか描けない世界には熱狂的なファンが居て、個展はいつも大盛況、即完売。でも、本人は姿を見せたことがない。テレビ等に出ないどころか、SNSもやってない。そのプライベートはごく一部の人しか知らないとされている、でしょ。」
清志が自分を指さしている。
「何してるの?」
「だからあ。」
クイクイっと自分を指さした。
「…ええ!?そうなの?」
彼は少し照れたように微笑んだ。
「かなりの値段で取引されてるわよね、風原…あなたの絵。」
「まあ、贅沢しなければ家族3、4人が普通に暮らしていけるぐらいはもう溜まったよ。」
「ダメ。」
「え…。お金だけの問題じゃないのは分かってるけど…。」
私は指を三本立てて突き出した。
「3人。子供は3人。またはそれ以上よ。それが私の条件。」
睨みつけてやった。
「了解、ボス。」
彼の圧力が私の下腹部に加わり始めた。私はもう止めない。