エッチなサンタさん-2
「サンタさん!あのね、僕欲しい物があるの!」
私は、前にサンタさん宛の手紙を母に書いてもらった事があり、何処かに出掛ける時は何時も持ち歩いて居ました。手紙を渡すと、サンタさんは戸惑った表情を浮かべ、背後に居る母を見たようでしたが、私はサンタさんへのお願い事を頼むのに夢中で、
「サンタさん、僕、弟か妹が欲しいんだぁ・・・良いでしょう?」
「お、弟か妹!?」
サンタさんは驚いた表情を浮かべ困惑し、母は苦笑しながら、
「拓ちゃん、お昼だから早く買い物済ませて帰りましょう」
「エェェ!?まだサンタさんにお返事貰ってないもん」
私が頬を膨らませると、母はちょっと溜息を付き、サンタさんに話し掛けると、
「すいません、この子こうなったら中々頑固で・・・直ぐ買い物済ませて来ますから、ちょっとこの子を見ててもらえますか?」
「えぇ、構いませんよ」
サンタさんは、母の顔と容姿をジックリ眺めた後、二つ返事で母の申し出を承諾しました。母がサンタさんにお辞儀し、スーパーの中に入ると、サンタさんはしゃがみ込んで私の頭を撫で、
「坊やのお母さん、中々美人だねぇ?」
「エへへへ」
「オッパイも大きいのかなぁ?」
「オッパイ!?ウン、大きいよ!」
私はサンタさんの質問に正直に答えました。子供の頃って、自分の事や家族の事を褒められると、つい言わなくても良い事を口走っちゃうんですよねぇ・・・
「そう、大きいんだぁ・・・」
サンタさんはニコニコしながらまた私の頭を撫でると、少し小声で私に話し掛け、
「坊やのお父さんって、どんなお仕事してるの?」
「知らない。でも、夜はほとんど居ないよ。20時頃にお仕事行って、僕が起きる頃に帰って来るの」
私の話を聞いたサンタさんは、真っ白な顎鬚を何度も触り、何か思案すると、再び小声で話し掛け、
「坊や、本当に弟や妹が欲しいの?」
「ウン!欲しいよ」
「お母さん、何か言ってた?」
「ウゥゥン・・・エェとね、赤ちゃんは、そんなに簡単に生まれて来ないんだって、その内、コウノトリさんが運んで来てくれるかも知れないって言ってたよ」
「フゥゥン、コウノトリねぇ・・・お父さんは何か言ってた?」
「ウウン、新聞で顔隠しただけ」
私が首を振りながらそう言うと、サンタさんは笑い出し、
「アハハハ、成程・・・奥さんは作る気あるけど、旦那はあんまりやる気になってないのか・・・」
サンタさんは独り言を呟き、何かを思案しだしました。私には意味が分からず首を傾げて居ると、サンタさんは再び小声で私に話し掛けてきました。
「坊や、お母さんが言う様に、赤ちゃんは直ぐ生まれてくる訳じゃないんだよ」
「エェェ、つまらない・・・」
「でも、上手く行けば、来年のクリスマスまでには、弟か妹が出来るかも知れないなぁ」
「ほ、本当!?」
「ああ、坊やがおじさんのお手伝いをしてくれるならね」
「お手伝い!?」
私は思わず首を傾げましたが、お手伝いをして弟か妹が出来るのなら、幼い私に断る理由は有りませんでした。
「坊やのお家は、煙突は無いんだよね?」
「ウン、僕のお家はアパートだから・・・煙突ないと駄目なの?」
私が当時住んで居たのは、木造二階建てのアパートでしたが、一階と二階の入り口が違って居て、家は一階の入り口を開けた正面の部屋でした。流し台、ガス、トイレ、洗濯機は共有でしたが、この当時一階の三部屋の内、家以外は隣に三十代ぐらいのおじさんが住んで居ました。よく出張で留守にする事が多く、私は、一、二度くらいしか顔を見た事がありませんでした。奥の部屋は、三か月前まで人が住んで居ましたが、今は空き室になっていました。
「煙突ないとお家に入れないからねぇ・・・でも、坊やがお家の玄関の鍵を開けておいてくれたら、入れるんだけどなぁ・・・」
サンタさんは、私の反応を見るかのように、チラチラ視線をこちらに向けました。私はよく意味が分かりませんでしたが、家の鍵を開けておくだけで良いならばと了承しました。サンタさんは私の頭を優しく撫でながら、
「じゃあ24日の夜、お家の鍵を開けて置いてね。でも、お母さんやお父さんに言っちゃ駄目だよ?二人だけの秘密にしないと、おじさん、坊やのお願い聞いて上げられなくなっちゃうからね?」
「ウン、分かった」
私は、こうしてサンタさんの申し出を受け入れました。戻って来た母は、そんな事を知る由も無く、サンタさんに私を見てくれたお礼を述べ、私達はこの場を後にしました。