第41話 『玩具で遊ぶ』-2
「ようし。 ウチが『もういい』っていうまで舐めるのよ」
55番は29番の顔を正面から跨ぐと、そのまま一息に腰を下ろした。 和式便器で用を足すべく、便座に屈む格好だ。 皮がむけたクリトリスが舌の先にあたるように、腰の位置を微調整する。
「ふむっ……んうぅ……」
ぺろっ、ぺろっ、ぴちゅっ、ちゅぷっ……。
29番が水気を含んだ舌を伸ばし、そっとクリトリスをつつく。 刺激が強すぎないよう、かといって弱すぎてこそばくないように――ここらの力加減は日々のカリキュラムを通じて習得済みだ。
「んっ……んんっ……い、いい……いいよ……その調子で……んくっ♪」
55番は甘い喘ぎ声とともに、ビクン、身体を仰け反らせた。 軽い絶頂を味わった余韻で息遣いが荒くなる。
ぺろっ、ぺろっ、ちゅぶっ、ぶちゅっ。
「あふっ……ん……あく……んあ……♪」
55番は素直に舌遣いを楽しんでいる。 彼女が興じている舐め奉仕は、普段の『湿実寮』で彼女が先輩に行っている奉仕でもあった。 1組・湿実寮では、伝統的に下級生は『舐め犬』と呼ばれ、ひとたび寮に入れば一切の人語が禁じられる。 箝口具がなくとも常に口を全開に保ち、舌を下唇より前に出して『ハッ、ハッ、ハッ』と短く浅い呼吸で過ごすことがデフォルトだ。 その上で、先輩が指差したモノなら、時と場合と対象に寄らず、一心不乱に舐めねばならない。 食事を供する食器類、先輩が使用した文房具、埃がついた靴、汚れた椅子の足、食事を終えたテーブル等、すべて下級生が舌で掃除する対象だ。 もっと酷な対象としては、洗濯機の内槽、お風呂の浴槽、便座、便器蓋、便器の内側、あげくには排水溝の蓋や排水溝のU字管、換気扇からゴミ箱まで揃っている。 更に先輩自身を舐めることで、舌を清めることもある(あくまで『舌で』清めるのではなく、先輩を舐めることで『舌を』清める)。 トイレを終えた先輩の指、小便を済ませた先輩の股間、大便を放った先輩の肛門、夏に汗ばんで酸っぱくなった脇から黒いゴマが溜まった臍、足の甲から踝から据えた薫りの指の股まで、平均して毎日1時間近く先輩の身体を舐めることになる。 要するにあらゆる汚物に舌を這わせることが、湿実寮下級生の務めといえよう。
指差されたものを舐めるだけなら、誰にでも出来る。 『指示されたものを舐める』という単純な命令に従うことで、下級生は上下関係を会得するわけだ。