第37話 『屈服ダンス』-2
「中腰・腰ふりダンスよ。 動かしていいのは腰とオケツだけだからね。 貴方の汚いチツマンコも見ててあげるから、誠心誠意励みなさいよね」
「……よろしくお願いします」
手を腰にあてる。 第3姿勢から一段と腰を落とし、パックリ膝を拡げて股間を突きだす様子は、がに股を超えて膣をひけらかす淫売だ。 1組『湿実寮』の食堂パネルに示された通りの、限界ギリギリまで重心をずらし、尻だけを後ろに突きだす格好。 その上で2番は尻肉に、キュム、力を籠めた。 尻たぶの中央に筋肉が寄り、キュッ、2つの窪みが出来る。 俗にいう所の『尻笑窪』だ。 大腿筋と大腰筋、そして双臀筋だけで尻肉を持ち上げ、股座に隠れた膣がカッポリ開く。 手を使わずに膣を拡げる所作は、股間の筋肉を総動員してやっとどうにかなるレベルにある。 本来後ろからだと尻に隠れて見えない膣が、尻の隙間からくっきり全貌を顕わした。
「くぅ……!」
歯を食いしばり、姿勢を維持しつつ、拡がった陰唇がプルプル震える。 2番がちょっとでも力を抜けばすぐに尻肉が落ちるだろうし、足を楽な幅に戻してしまえば、陰唇が元通り閉じるだろう。 苦しい姿勢をわざわざ保つ理由が、恥じらいを捨てて内臓を晒すためというのもおかしな話なのだが、学園的には当然の理屈だ。
「んっ……ふっ……」
2番は膝をつかい、そのまま腰を上下させた。 上と下で方向を変える際、腰をつかって股間が真上、真下を向くよう強調する。 膝に合わせて陰唇が閉じ、上から下、下から上に移動する途中でクパッと広がる。 パネルにあった『中腰・腰ふりダンス』である。
数分間無意味な膣の開閉運動を披露したところで、
「オッケー、次にいくわ。 エア騎乗位からの、エア花びら大回転。 ぜったい笑顔を崩しちゃいけないからね。 満面の笑顔で、効果音付きで、しっかり誠意を見せるのよ」
「はいっ」
2番は50番に背中をみせたまま、その場にしゃがんで踵の上にお尻を乗せた。 相撲でいうところの蹲踞、ただし尻を必要以上に踵に押しつけ余分な肉を強調するため、ただただみっともなく、力強い印象からは程遠い。 そのままそろそろと踵を離し、そうっと股間を床に寄せる。 2番がイメージするのは、床に生えたエボナイト棒を膣で咥えるイメージだ。 もちろん実際にエボナイト棒がセットされているわけではなく、あくまで想像しながら腰を落とす。
「はぅっ……あはぁ……んっ」
わざとらしく喘ぐ2番。 喘ぎに合わせて緩急をつけ、豊かな桃尻を上下させる。
「アッ、アッ、アフッ、アンッ、アンッ、アンッ!」
「効果音も忘れずに」
「……ぬ……ぬ……ううぅ……」
「さっさとなさい。 それとも服従しないつもり?」
「……ぬっ、ぬぷっ、ぬっ、ぬぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ!」
しばし躊躇うも、2番は言われた通り、膣をエボナイト棒が摩擦するオノマトペを連呼する。 淫靡というより、馬鹿馬鹿しく、ただ行為を貶めるためだけのミジメな擬音。
「ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ……」
腰の上下に合わせ、2番は鼻にかかった舌足らずな音を発した。
「アラアラ、もう濡れまくりなんだ、貴方って。 もう少し控えめな音を期待してたのに、ほんと、恥も外聞もないのね。 入れた瞬間グチャグチャになってるなんて、ガッカリ。 そんな下品なチツマンコ、想像したくないんだけど」
「ぬちゃっ、ぬちゃっ、ぬちゃっ……うぅ……も、申し訳ありません……」
「謝罪はいいから、効果音を休まないで」
「ぬっ、ぬちゃっ、ぬちゃっ、ぬぷっ、ぬぷっ!」
僅かの人語も許されない。 2番は両手を前につき、その場に実際は存在しないエボナイト棒を膣に収めるべく、激しく尻を上下させる。 時には片手を前、片手を背後に変えて、背中を僅かに反らして腰を振り、一層リアルな騎乗位を演出する。 或は両足を地面にペッタリ密着させ、全身を使った反動でもって身体を上下させてみたり、床に大の字にうつ伏せになり、尻だけを上下させ股間を床に叩きつける運動『尻立伏せ』に興じてみたり、のべつまくなしに股間を上下に抽送した。
「ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぶちゅっ、ぶちゅっ……!」
もちろん、腰を振る間中ずっと、無様な効果音は継続する。 50番が、
「これだけ腰ふってるんだから、濡れ具合も変化してるでしょう」
と呟いたので、必然、オノマトペは『ぬぷぬぷ』から『ぬちゃぬちゃ』に、『ぬちゅぬちゅ』から『びちゃびちゃ』へ、際限なくエスカレートだ。 終いには1振りごとに、
「じゅぷぷぷんっ、じゅぷぷぷんっ、ぶじゅぶじゅぶんっ、ぶじゅぶじゅぶんっ!」
効果音だか冗談だか分からない、意味不明な擬音になる。 それでも2番は真面目に連呼し、50番は涙を浮かべて嗤うのだった。